セリエの冒険・ナポリvsユヴェントス~両チームの差はどこにあるのか?~

継続して見ているマドリーと違って、こちらの試合はビックマッチ、もしくは発見があった試合が中心になる。継続して見ている試合の場合、些細な変化を見逃さないように心掛けている。それがたまることでプレーモデルが大きく変わるのは、往々にして良くあることだからだ。逆に継続して見ていないチームだからこそ、大きな発見があることもある。こういう構築もありなんだとか。駆け引きの部分。チーム自体の問題点より、新しいものを見る新鮮さがある。それが面白い。
ナポリvsユーベはそういったビックマッチの1つだ。幸運なことに、この2チームは何度か見たことがあるので他のチームよりは馴染み深い。試合は、正面衝突。駆け引きもあったが両チームの良さが目立った前半と戦術的であった後半。その理由はなんだったのか?
セリエは2強時代と言われていて、ユーベとローマが熾烈なライバル争いをしている。試されるのはナポリ。タイトル争いに加われるか?これはその登竜門である。ナポリスクデットを狙う資格があるのか?


■ボールを何処で奪うか?
ボールを持つユーベと待ち構えるナポリ。どちらが有利になるかは、攻守の切り替えのスピードで決まる。ユーベは奪われた後に、すぐに守備を構築できるか。ナポリはユーベの守備が整う前に攻撃出来るかが鍵になる。トランジションのスピードは選手のポジショニングに依存する。立ち上がりはナポリが上手くボールを奪うことに成功していた。
f:id:real714:20150123203256p:plain
ナポリのDFはピルロを挟み込むようにしてブロックを作っていた。ピルロマンマークで試合から追い出すというよりは、パスコースを切る。狙いはサイドチェンジによる中継をさせない。真ん中でプレーさせないことが上げられる。そのため、マルキージオ、ヴィダル、ポグパが起点になる。彼等はナポリのFWとMFの間のスペースを狙っていた。
f:id:real714:20150123203351p:plain
ベニテスの狙いはこのスペースでボールを奪うことにあった。CBからのビルドアップからの縦パスを狙って、プレッシング。サイドチェンジを阻害していたのは、このためだ。サイドチェンジ→スライド→スライドされる前にパスという流れを遮断する。
それに対して動き出したのはピルロ。CBがプレッシャーを受けているなら、それを緩和しよう。
f:id:real714:20150123203440p:plain
ピルロが下がって3CBになるメリットは両脇のCBが高い位置を取れることにある。シャビ・アロンソがマドリーでこなしていた役割に近い。ナポリのFWの両脇からボールを運びたい→そこでフリーで持てる選手を配置。キエッリーニが高い位置を取ることで、エヴラが高い位置を取ることが出来る。サイドの数的優位を利用して、ボールを前進させるユーベ。そんな中、ポグパのスーパーなミドルで先制。
ベニテスvsアッレグリ
後半になるとカジェホンデ・グズマンがCBまで遅いかかるようになる。勝負をかけてきたベニテス。高い位置からのボール奪取と速攻がハマる。その分ユーベのカウンターが威力を増すようになるが、負けているナポリにとって大切なのは時間。自分たちの攻撃機会を増やすのを優先してきた。ハムシク→メルテンスでデ・グズマンをトップ下に。サイドからドリブルで切り込むメルテンスでチャンスを作るとコーナーから同点に追い付く。
f:id:real714:20150123203742p:plain
試合が動いたのはまたしてもセットプレー。カウンターからファールを貰うとピルロからカセレスでリードを奪う。ユーベに決定的な一点が入ると、アッレグリは手を打つ。4バックから3バックへの切り替えである。後半からは、ボールを持つナポリのビルドアップの特徴としてサイド→中央のボールの循環が上げられる。ならば、そのサイドのスペースを埋めてしまおうと。
f:id:real714:20150123203825p:plain
サイドで孤立したカジェホンと メルテンス。彼らが出来ることはクロスを上げることしかなかった。しかし、このクロスがなかなかの迫力であった。次々にチャンスを作るも、ノーゴール判定だったり、枠に飛ばない。最後はカウンターからモラタ→ヴィダルで止めを刺す。

アッレグリ監督になってから役割が多様化してきている。コンテの時は、役割が固定されていた。ビルドアップ部隊、裏に飛び出す選手、サイドのポジションチェンジ等だ。それがより色んな選手がこなすようになっている。ピルロがCBの位置に落ちたり、マルキージオ、ヴィダルがピルロの役割を行ったりしていた。多様化する役割で活きているのはポグパ、サイドに飛び出したりフィニッシュに絡むプレーが増えている。難しそうなのは、選手の連携と役割の共有。ここが曖昧になると全然機能しなくなりそう。4ー3ー1ー2にシステムチェンジしたのは、それをよりしやすくするためではないか?
ナポリとの差は相手への対応策。試合中に柔軟に形を変えていくユーベに対して、ナポリはハーフタイムを挟まないとプランを変更出来なかった。ただし、ナポリの基本に忠実な形は精度が上がってきている印象がある。型を変えないことで、スピードが上がっているのか?ベニテスのチーム構成はモウリーニョとも似てて、少しプレミアっぽい。このプレミアっぽさはもう少し試合を見て考えていきたい。

プレミアリーグの研究・エヴァートンvsシティ~躍動するシルバとシティの弱点~

プレミアリーグらしいインテンシティの高いゲームになった。インテンシティとはプレー強度のことを言う。ボールを失ったら、素早くプレッシャーをかけれるか。プレッシャーがかかった状態でも速く正確にパスを繋げることができるか。ボールを繋ぐことができたらゴールまで迎えるか。キーワードはプレー速度にある。

両チームの最初の差になったのは繋ぐ能力値。お互いが相手のDFラインに激しくプレッシャーをかける。ボールを託されたエヴァートンボランチがほとんど繋げなかったのに対して、シティはボールを繋げた。フェルナンジーニョとフェルナンドがボールを繋ぐことでシティはエヴァートンのスペースをつく。
f:id:real714:20150116003702p:plain
エヴァートンはシティのプレッシャーに対して、たじたじになっていた。後方が全く繋げない+ボールを取られてのショートカウンターを喰らう。必死にボールを追いまくる、シルバとヨベディッチ。それに連動する中盤。フェルナンジーニョが高い位置からボールカットしまくる。
ボールを繋げない時に重要なのは、ボールを逃がすこと。ショートカウンターへのリスク管理である。ロングボールで逃げるエヴァートン。ルカクにロングボールのターゲットになってもらい、そこから攻撃を作ろうとする。
f:id:real714:20150116003752p:plain
ボールをキープ出来なくても、そこからのプレッシングで守備をセットし直す。
しかし、徐々に弱まってくるプレッシングにシティがボールを持ち、押し込まれてしまう。
f:id:real714:20150116003847p:plain
相手を押し込んだ場合の攻撃の起点がシルバ。MFとDFの隙間にポジションを取ることで、フリーでボールを受ける。受け手がシルバなら出し手はフェルナンドとフェルナンジーニョ。彼等が楔のパスを打ち込む。
この展開は不味いエヴァートン。ということでフェルナンドとフェルナンジーニョにプレッシャーをかける。
f:id:real714:20150116003958p:plain
登場するのはナスリとヘスス・ナバス。低い位置に下りてくることで、ボールを運ぶのを手伝う。代わりに裏に飛び出すクリシーサバレタ。ドリブルとパスでボールを運ぶので、エヴァートンのマークがズレる。
ナスリはシルバと同じような役割を果たしていた。シルバがボールを持った時は裏に飛び出す。この二人の上下のポジションチェンジにより、エヴァートンを崩すことに成功する。


面白かったのは、エヴァートンの守備に対する考え方。プレッシングがかわされるならば、セオリーとしては引き込もってゾーンで守るほうが良い。何故ならプレッシングは相手にスペースを与えるリスクのあるものだから。だが、そうしなかった。逆に得られたものもある。エヴァートンがボールを持つ攻撃機会だ。ここから見えてくるのはシティの隙である。トランジション(攻守の切り替え)はかなり速いシティだが、自陣に籠っての守備は微妙であった。セットしたDFの強さはポジショニングを守れるかどうかで決まる。シティの前線は流動的にポジションチェンジを繰り返すので、固定されたポジションを取ると攻撃のバランスが崩れてしまう。だからこそ、高い位置からのプレッシングは必需品なのだ。そのため、プレッシングが弱まると攻守のバランスが崩れる。その影響で失点が多いのかなと。守備のバランスをいじるよりは、ボールをポゼッションして攻撃のペースをいじったほうが良い気がする。でエヴァートンの狙いはそこだったんじゃないかと。つまり、シティの後方に時間を与えないこと。攻撃を繰り返させることで、自分たちの攻撃機会を増やそうと。
f:id:real714:20150116004045p:plain
ナスリ、シルバ、ヘスス・ナバスの位置を下げたくないシティ。ならばサイド攻撃でチャンスを作ろうとするエヴァートンネイスミス、マクギティーにコールマンとベインズのオーバラップで勝負する。試合は完全に切り合いに。
後半になっても流れは変わらない。徐々にシティの前線のプレッシングが弱まる。それは、疲労によるものが大きいのだろう。エヴァートンの攻撃的なプレスに合わせて攻撃のスイッチを入れ続けるシティ。攻撃機会が増えていったエヴァートンはルカクを中心に徐々にハートに襲いかかる。嫌な流れの中、先制はシティ。逆カウンターからシルバのシュートをフェルナンジーニョが押し込む。しかし、その直後にネイスミスにゴールを奪われる。先制後にも試合への入り方を変えないシティ。むしろ変えられなかったのか。もう少し試合のゲームコントロールが出来れば内容も安定しそうではある。

ライバルの動向・バルセロナvsアトレティコマドリード~変わりつつあるメッシの役割~

この試合ではメッシ、ネイマールスアレスの3トップが爆発。アトレティコのDFを攻略し、昨年の宿題をクリアした。3トップの活躍は、ラキティッチとアウヴェスの献身的なプレーのおかげであった。
f:id:real714:20150115081645p:plain
アトレティコマドリードは4ー6ー0型で守備をセット。守備ブロックを作る上で大事になってくるのが、どこを捨てるか?である。逆に攻撃では相手がどこを捨てているかを見極める必要がある。アトレティコが捨てたのは、FWの横のスペースだ。昨年のレアルマドリードはSBの位置にモドリッチとディマリアを配置することで攻略に成功している。バルセロナは懐かしのメッシの右サイドで攻略を図る。ビルドアップは左はイニエスタマスケラーノを起点にするもので、いつも通りであった。面白かったのはアウヴェスの役割だ。かつては右サイドの裏に飛び出すのはアウヴェスの仕事だったが、今回はビルドアップの起点になっていた。逆に飛び出すのはラキティッチ。これはアウヴェスの走力が落ちてきているからかもしれない。それでもインテリオールとして振る舞うアウヴェスのプレーはなかなかのものであった。
f:id:real714:20150115081736p:plain
メッシがサイドの高い位置でボールを持つと面倒になる。なのでメッシには強めのマークをつける。それを剥がすためにラキティッチがSBの裏に飛び出す。ラキティッチの空けたスペースにはアウヴェスが入る。
メッシが低い位置からドリブルでボールを運ぶことでチャンスを作る。メッシがフリーでボールを受けれたのはこの二人の献身性のおかげである。

かつてはシャビが行っていたボールを運ぶ役割をメッシがこなしている。ラキティッチはボールに触る回数こそ少なかったが、走ることでスペースを作っていた。
f:id:real714:20150115081819p:plain
メッシがゴール前からいなくなったことでゴール前での脅威が減ると思ったら、そうでもない。そのためのルイス・スアレスだ。スアレスは自由に幅広く動くことでらしさを発揮していた。彼はスペースへの飛び出しが本当に上手い。ポジションを変えていくネイマールとメッシに呼応して、スペースに飛び出していく。ゾーンの隙間でも問題なくプレーできる彼がいるから中央の脅威が消えることはなかった。


今まではメッシが如何に点を取るか?を計算して設計されていたバルセロナに変化が起きている。あくまでも起点がメッシであるのは変わらないが、スアレスネイマールの存在により、サイドからドリブルするメッシが復活した。レアルマドリードで言うとモドリッチがこなしている役割に近い。ボールを運ぶことに関しては、世界最強クラス。それを支えるラキティッチとアウヴェスの献身性。これはなかなか面白かった。前半のアトレティコはボールの取りどころを失ってしまう。バルセロナのサイド攻撃にたじたじに。

それに対するシメオネの答えは4ー1ー4ー1。サイドのスペースに人を埋めることで対抗する。それでもバルセロナの後方が時間を得ているために、勢いは止まらない。
だったらプレッシングだ。バルセロナの後方に時間を与えないプレッシングで勝負。2点差で失うもののないアトレティコはリスクをかけてきた。失ったのはスペース。アトレティコの中盤にポッカリ空いたスペースを利用するバルセロナ。いわゆるカウンターである。バルセロナらしくないカウンターでガンガン仕掛ける。
アトレティコはPKで一点を返し、なんとか望みを繋げる。望みを断ち切ったのはメッシ。スアレスのロングサイドチェンジから、ボールを受けるとかけ上がるラキティッチへ。ラキティッチの折り返しを決めることで試合を終わらせるのであった。


カウンターを仕掛けるバルセロナに強烈な違和感を感じた。ネイマールもメッシも無理矢理な突破が目立った。少しずつバルセロナのサッカーにも変化が現れてきているのかもしれない。

プレミアリーグの研究・チェルシーvsトッテナム~インテンシティとは?攻守の切り替えスピード~

僕が最初にビックリしたのは、そのスピード感である。攻守の切り替えのスピード、攻撃の仕掛けの早さは尋常じゃない。両チームともにそんな感じなので、とても面白い流れになっているなあと。そんな中、特に感じたのはスペースが結構あるということだ。プレミア上位陣の闘いにも関わらず、相手に結構スペースを与えるんだなと。特に試合開始直後のアザールのドリブルはそれを印象づけた。アザールの相手を外す技術も凄かったが、こんなにスペース与えたらそれはそうなるだろうと。あまり、ブロックを作るという感覚がないのか、この試合がたまたまなのか?はまだわからない。
ボールを奪った後、両チーム共に直ぐにカウンターを仕掛ける。ボールを奪うというのは攻撃的な行為である。ブロックを作らないため、攻撃もゆっくりやるより、すぐに仕掛けたほうがよい。攻撃を落ち着けて、ボールをポゼッションするシーンはほとんど見られない。ブロックがないから攻撃はオープンな展開になる。例えば、ゾーンでブロックを作られた際に大切なのはポジショニングであり、ボールを繋ぐことだ。しかし、そういった展開にならないために、スペースをいかにつくかが大切になってくる。
セスク・ファブレガスエリクセンを始め、プレミアリーグにもリーガっぽい選手が加入している。スペインリーグでは時間を作り、攻撃を構築するのだが、ここでは違う。いわゆる、狭いエリアでもプレーできる彼等の長所を活かして、中央を崩すために使われる。


要するに、プレミアリーグは速攻の応酬なんだと感じた。カウンター対カウンターの殴りあい。そうなってくると全体をコンパクトにまとめる+ディフェンス力が強いチームが勝つわけで。ここでのDF力はゾーンディフェンスでスペースを管理するわけではなくて、相手の攻撃を跳ね返すもの。ゾーンは極端に言えば、走る量は問われない。大事なのはポジショニングを守る感覚であり、それぞれが役割を果たせるかどうかなのだ。そうじゃなくて、プレミアで大事になるのは走力なんじゃないかと。

スペースへの意識より、人への意識が強い。ディフェンスはよりマンマーク気味であった。
ブロックを作るより、攻守の切り替えのスピードを上げて、ボールを奪うことを優先する。
f:id:real714:20150111090936p:plain
走るトッテナム。両サイドのMFとSBがとにかく走る。更に、ケインとエリクセンが裏に抜けることで徹底的にサイドからの攻略を狙う。アザールとウィリアンに走力で勝負する。
f:id:real714:20150111091037p:plain
トッテナムの守備はマンマーク気味に考えられたものであった。少なくともサイドの守備はマンマークで考えられていた。チェルシーのSBがボールを持ったら猛烈にプレッシャーをかけるタウゼントとシャドリ。
ウィリアンが戻ってこないのでシャドリとローズのコンビネーションに手を焼く。何故ウィリアンは戻って来なかったのか?
f:id:real714:20150111091140p:plain
アザールをカウンター要員にしているため、左サイドの守備はセスクが行っていた。その分、ウィリアンが中央のスペースを埋めていた。これがこの試合に限ったことなのかどうかは不明。ポジションチェンジの弊害はDFにある。本来いるべき場所に人がいないので誰かがカバーしなくてはならない。もっとも、これは中央をガッチリ守るマティッチありきの守り方ではあるが。

そんなチェルシーのDFに対して、サイドからの一点突破を目指すのがトッテナム。中央ではなく、サイドに人を集める。
f:id:real714:20150111091225p:plain
仕掛けは簡単である。相手のSBを釣り出してスペースに人を走らせる。特徴的だったのはケイン。サイドに流れてチームにタメを作る。シャドリやタウゼントを中央に逃がしていた。時にタウゼントがイヴァノビッチの裏にまで流れるシーンが見られた。トッテナムの狙いはチェルシーのSBだったようだ。
これは不味いチェルシー。ケインのカットインからミドルシュートが決まる。動き出したマティッチ。そして、それを待っていたエリクセン
f:id:real714:20150111091303p:plain
マティッチがいたスペースでボールを受けるとシャドリへのパス。イヴァノビッチはカバーするも大外のローズがフリーでこぼれ球を豪快に突き刺す。
この辺の仕組みはレアルマドリードの時と同じような印象を受けた。マドリーでディマリアがこなしていたのと同じ役割をウィリアンがやっている。

後半に入り、動くモウリーニョ。走れないオスカルに変えてラミレスを投入。システムは4ー2ー3ー1から4ー3ー3に。それでも流れは変わらない。またもケインに豪快なミドルをカットインから決められる。

モウリーニョがこの敗戦をどう受け止めているのか。前線からのプレッシャーが甘いと相手にボールを運ばれてカウンターを受ける。

攻守の切り替えという点で、チェルシーは完全にトッテナムに劣っていた。モウリーニョの言葉を借りるならインテンシティに欠けていたわけだ。前線からのプレッシャーがかかっていないため、ボールを運ばれる。前半は、ブロックを作り、自陣に後退することでなんとかDFをしていた。それでもチャンスを作られた。後半は、そこを無理に後方の選手がボールを奪いにいく→カウンターで致命傷である。チェルシーのサボっていた選手は前線の二列目。オスカル、アザール、ウィリアン。それでもウィリアンは自陣に帰ってきていた。アザールも守備免除は元からの可能性が高い。そうなると、犯人はオスカルか。後半走れなくなっていたオスカル→走るのが長所のラミレスの交代は納得いくものだ。
逆にトッテナムの二列目は良く走っていた。タウゼント、シャドリの上下動は、アスピリクエタとイヴァノビッチを苦しめた。
プレミアリーグはより攻撃的なリーグという印象を受けた。もう少し継続的に見ていけば、色々わかるかもしれない。攻守の切り替えとスピード感、インテンシティは三大リーグの中でも最も激しいものだった。

CLの挑戦・マンチェスターシティvsローマ~攻守の切り替えの考え方~

ローマが格段に悪かったとも思えない。かといってシティが特別な準備をしたとも言えない。結果はシティの2ー0。ホームでの借りを返した。両チームの結果に差が出たのは何故か?それを考えたい。

シティは4ー4ー2で守備をセット。プレッシングでローマのビルドアップを阻害しようとする。シティが設定したボールのい処はローマの中盤。ピャニッチとナインゴランのところはかなり激しくアプローチしていた。ローマの攻撃メカニズムとしてトッティの0トップが上げられる。シティの中盤の空いたところにトッティが下りてくるメカニズムだ。シティはここもついていった。マンガラとデミチェリストッティを吹き飛ばすシーンが目立つ。ローマにはもう一段階の攻撃手段がある。それが裏に飛び出すジェルビーニョである。シティのDFが捨てたのはこの部分であった。ローマの狙いはジェルビーニョの単独突破に絞られた。セリエでは止めることができない存在ジェルビーニョバイエルン相手にも個人技は通用していた。ところがここが勝てない。クリシーvsジェルビーニョでなかなか勝率が良くなかったのである。
f:id:real714:20141230030047p:plain

シティの攻撃の中心は、ヘススナバス。右サイドをドリブルで突破するプレーに関しては世界No.1である。シティの攻撃はヘススナバスの突破力を活かしたものであった。サイド攻撃を志向したのはローマのカウンター対策のためである。
f:id:real714:20141230030154p:plain
右サイドに極端な程、人数を集める。中心はナスリ、ジェコ。ナスリは中央の隙間にポジショニングを取ることで、ローマDFがスライドしにくい環境を作っていた。逆サイドからミルナーが流れてくる場面もあった。ローマは規則正しいゾーンなのでマークのズレが起こる。それだけではない。ヘススナバスを一対一にさせるためであった。懐かしのセビージャを思い出す戦法。相手がスライドで対応してきたらサイドチェンジ。逆サイドのミルナーは裏に飛び出していった。数的優位の構築の目的は、ボールを奪われた後のトランジションに関係がある。
f:id:real714:20141230030254p:plain
ドルトムントアトレティコがそうだったように人数を集めるとプレッシングがハマりやすい。ドルトムントは中央。アトレティコはサイドに人を集めた。中心はフェルナンドとフェルナンジーニョ。主にフェルナンジーニョがプレスしてフェルナンドがカバーする形であった。この時の距離感が絶妙。すぐにプレッシャーをかけれる位置にポジションを取るので、中心を幅広く守れる。彼等のもう1つの役割が攻撃のやり直し地点の確保である。ローマが極端なスライドで人数をかけてきた場合、サイドチェンジをする。サイド攻撃が行き詰まった時のボールを落ち着けるポイントになること。ローマはここのマークの設定も微妙であった。

シティの狙いはボールを奪ってからのショートカウンターもあったが、それ以上にローマのカウンターを防ぐことを優先していた。ネガティブトランジションで時間を稼ぐと、速やかに自陣に撤退する。ボールを無理には奪いに行かない。ローマにスペースを与えたくないようだった。そのため、ローマはシティが守備がしっかり整った状態から攻撃をスタートさせることが多かった。しかし、その攻撃に連続性がない。単発で終わってしまう。その理由は、シティのボール運びにあった。
f:id:real714:20141230030401p:plain
シティはボールをポゼッションして攻撃するチームである。日常からそのような攻撃を志向している。そのため、ローマのボールを奪うと普通に繋いでボールを運ぶことができる。それでも、ローマのプレッシングがハマることもあるだろう。そんな時はロングボールもしくはDFラインの裏へのボールで逃げる。ロングボールの競り合いはジェコ、時々ミルナーミルナーは地味に背が高いし、裏へ献身的に走っていた。ジェコの空中戦の勝利からカウンターの場面も多かった。また、サイドに流れて数的優位からボールを運びも手伝う。何でも屋のジェコのおかげで、楽にボールを運ぶシティ。
ここでわかってくるのがローマのチーム設計だ。ローマはマイボールになった時、そこまで焦って攻撃を仕掛けない。ボールをしっかり繋いで、攻撃する。それは繋いで崩せるメカニズムがあるのもそうだが、ボールをポゼッションして相手の攻撃機会を減らしているからだ。ローマ相手に無理なプレッシングを仕掛ければ、たちまちカウンターが発動する。トッティジェルビーニョの絡んだカウンターを止めるのはなかなか難しい。ローマの速攻は、相手のプレッシングで発動する。シティは引いて守ることでローマの速攻のトリガーを引かせなかった。引いて守ったときに強さを発揮したのはシティ。フィジカルで勝るシティの壁は厚く。ローマはゴールをこじ開けれなかった。
そして、いざとなったら繋げるという点がアドバンテージをもたらした。速攻だけでなく、ポゼッションしながらでも攻撃ができるのはシティの強みである。
シティの狙いは、ローマに攻守の切り替え時間でのカウンターをされたくないというものであった。その隙間の時間で活躍するトッティジェルビーニョを封じようと。ローマのボール保持は、相手の攻撃機会を減らすことが目的である。ならば、ローマのボールを保持する時間を限定すれば、こちらの攻撃機会が増える。こちらがボールを奪われた際は、素早いプレッシングでカウンター対策。そのための数的優位作成となかなか利にかなった攻撃になっていた。


それでもシティのプレッシャーを掻い潜り、速攻を仕掛けるローマ。ジェルビーニョやホレバスが決定機を決めきれない。ローマの攻撃は偶発的なものになった。
先制点は、シティのナスリによって生まれる。シティのもう1人のキーマンがナスリ。数的優位のためにサイドに下りてきたり、相手のゾーンの隙間でボールを受ける。先制点はナスリのミドルシュートか、決まった。

シティの交代策は、ヘススナバス→シルバ。先制点が決まる前からシルバが準備していたことを考えると、ボールをより保持しようとする采配になるだろう。攻撃機会を増やそうという采配。サイドでの数的優位でのカウンター対策から、中央での数的優位で攻撃を加速させようとする。リードしていてもボールを保持することで、相手の攻撃機会を減らすことができる。ナスリをサイドに出して、シルバをトップ下に。サイドに流れても仕事ができるシルバとナスリなので、前半の流れを継続させる。

シティの目論見が全て成功したわけではなかった。ローマにも得点のチャンスは、十分にあったわけで。しかし、ことごとく枠にいかない。バーやポストに阻まれる。論理的に取り組んだシティより、ローマのほうがチャンスを掴んだ。ローマよりチャンスが少なかったシティが勝った。そんな試合であった。

CLの挑戦・アーセナルvsドルトムント~無秩序への誘い・パスサッカーの違い~

セリエのサッカーが盤上の駒のやり合いである。プレミアのチームはそれとは全く違うものだ。その1つとしてプレースピードというものがある。攻守の切り替え(トランジション)が上のチームが勝つ。そういう意味では、プレミアらしい闘いぶりでドルトムントを葬り去ったアーセナルであった。


前回ドルトムントのプレスに破れたアーセナルだが、今回はしっかりリベンジを果たす。一方のドルトムントは、リーグ戦の不調をそのまま引きずる結果に。僕は普段ブンデスリーガを見ない。そのため、ドルトムントが何故勝てないのかわからない。ドルトムントは何故不調なのか?その理由を考えたい
f:id:real714:20141209112424p:plain
ドルトムントのプレスはアーセナルのCBを狙ったものであった。それは前回と一緒。今回はプレスに来るならば無理に繋がない。だったらロングボールで逃げる。GKを使ったロングボールでサノゴを起点にして逃がす。これが対ドルトムント仕様なのか、それともいつも通りなのかはわからない。
f:id:real714:20141209112508p:plain
とにかく厄介なドルトムントのゾーンの壁をすり抜けていく。アーセナルの狙いはもう1つあった。それはロングボールのこぼれ球によるプレッシングである。
f:id:real714:20141209112549p:plain
ただし、ドルトムントはプレッシングに対する解決策がある。GKとギュンドアンを使ったビルドアップである。アーセナルの無理なプレッシングはドルトムントにスペースを与えることになる。
f:id:real714:20141209112640p:plain
しかし、この現象こそがアーセナルの狙いであったのだ。サノゴとアレクシスとチェンバレンが前線からドルトムントの後方の時間を奪う。正確に言えば、ドルトムントの攻撃を縦に急がせる。ビルドアップが論理的に組まれたものだとしたら、ロングボールやプレッシングによるショートカウンター等は、無秩序な部類に入る。自然と攻守の切り替えの速さが問われる。

サノゴがロングボールに何度も競り勝ったのもそうだし、アレクシスやチェンバレンの個人の突破もそうだが、彼らは1人で状況を打開できる。相互関係ではない。単独の行動でだ。

僕が言いたいのは、こういうことだ。これがわざとなんじゃないかと。ドルトムントの論理的な崩しに対して、無秩序の誘いをするというものだ。そして、そういった状況で強さを発揮するマルコロイスやレヴァントフスキーはいない。前者は怪我で後者は移籍してしまった。必然的にカウンターの威力は低下してしまっている。
ドルトムントのボールを奪った後の切り替え(ポジティブトランジション)とアーセナルのボールを奪われた後の切り替え(ネガティブトランジション)のスピード対決に持ち込むことでアーセナルが戦況を有利に持っていけた。
f:id:real714:20141209112732p:plain
ボールポゼッションは試合の結果や内容と無関係である。それでも両チームの試合への取り組みかたの物差しにはなる。パスサッカーのイメージが強いアーセナルであるがポゼッション率は意外と低い。この日も45%のポゼッション率でドルトムントより下であった。ただし、これはネガティブな意味合いではない。アーセナルの選手たちは、ボールを保持した時に止まって受けない。必ず動いてボールを受ける。ポゼッションサッカーの肝はポジショニングであるが、それを無視している。スペースを作るためのランニングを重視しているからだ。


そのため、DFにも影響が出ている。教科書通りのポジショニングではない。ポジションに縛られない。これにはいい意味と悪い意味がある。いい意味は、プレッシング等の密集地帯を作りやすい。アーセナルは狭いエリアでもパスを繋ぎきるテクニックがある。これがアーセナルのパスサッカーである。悪い意味は、ポジションを守らないために相手にスペースを与えてしまうことだ。

サイドに配置されたチェンバレンとアレクシスだが、どんどん動き回る。縦に走るランニングを繰り返す。相手を崩すためのスペースメイキング。しかし、逆に言えば、試合時間をコントロールすることが出来ない。ボールをポゼッションするためのポジショニングは出来ないわけだ。



■動いてボールを貰うこと
バルセロナバイエルンがポジショニングを守ってボールを受けるのに対して、動いてボールを受けるアーセナル。サノゴの周りに走り回るアレクシスとチェンバレンを配置したことから分かるように、ポジショニングに関係なく、どんどん選手が飛び出してくる。

セリエやリーガの組み立てが論理的なのに対して、ある程度の無秩序だ。無秩序状態では個人能力が物を言う。相手のプレッシングを外したり、ドリブルで切り込んだり、ミドルシュートだったりだ。
プレミアリーグはそんなぶつかり合いなのだ。個人能力対決。

ドルトムントの組織的なゾーンの壁を崩す。トランジションからのカウンターでゴールを奪う。そのためにわざとオープンな展開に持っていく。攻守の切り替えのスピード対決に持っていくわけだ。

プレミアリーグがそういった正面衝突な対決になるために鍵を握るのが、トランジションの速さである。フォーメーションや選手配置等の小難しいことを抜きにした。純粋な力勝負。トランジションのスピード対決である。スピードが速い中で問われるのは、個人のテクニックである。速い中でも正確にボールを奪えるか、奪った後に繋げるか?相手のプレッシングをかわせるか?ドリブルで状況を打開できるか?トランジション中は攻守の切れ目である。セットされたオフェンスとセットされたディフェンスの間。無秩序状態。そんな中で状況を変えるのは、個人能力の高さである。
逆にセットされた状態ならば、戦力差を考えなくていい。与えられた役割をしっかりこなせるかどうか。

CLの挑戦・アトレティコマドリードvsオリンピアコス~トランジションのスピード差~

アトレティコに完敗したオリンピアコス。その原因は何だったのか?原因はスピードの差にあった。アトレティコの方が速く正確にプレーしていた。オリンピアコスはそのスピードについていけなかった。アトレティコはボールを奪われたら直ぐ様、ボールを奪い返すプレッシングを敢行。オリンピアコスの一点目はそうした攻守の切り替えから起きた事故であった。今回はそんなプレーのスピードに注目していこうと思う。


アトレティコの攻撃の仕組みについてはとにかく走るという一言に尽きる。スペースへのランニングでボールを受ける。ボールをポゼッションしながら進むというよりはとにかく前にボールを運ぶイメージだった。

アトレティコは、オリンピアコスの守備の陣形が整うまえに攻撃を仕掛けていた。いわゆるカウンターである。カウンターの定義をするならば、守備の陣形が整う前の攻撃となる。ここで言う陣形とはゾーンの形だ。ゾーンディフェンスはボールホルダーへのプレスがかかっていることが前提条件となる。つまり、カウンターは相手のラインが整って、ボールホルダーにプレスをかける前に攻撃を仕掛けることになる。こういった状態をオープンな状態とも言うことがある。アトレティコの2点目は、そんなオープンな状態から生まれた。オリンピアコスのMFはラインは作れているがアンサルディがフリーであった。そのアンサルディからのアーリークロスからオリンピアコスのDFがクリアミス。マンジュキッチにゴールを決められる。ゾーンディフェンスの網を超える裏技としてロングボールが上げられる。ゾーンのラインの一列目、二列目、三列目を超えるパスを出すことができれば、簡単にボールを届けられる。だからこそ、ボールホルダーにプレッシングをかけなければいけないのだ。

相手にボールを取られた際に素早く、守備陣形を整えることをネガティブトランジションという。逆にボールを奪ったら直ぐに攻撃を仕掛けることをポジティブトランジションという。アトレティコのポジティブトランジションオリンピアコスのネガティブトランジションを上回ったのだ。
f:id:real714:20141207203646p:plain
オープンな状態を放置するのは極めて危険な行為だ。直ぐに守備陣形を整える必要がある。そのためのファーストディフェンダーである。そして他のメンバーは自分のポジジョンに戻る必要がある。
ネガティブトランジションの中には、そのままボールを奪いに行くという荒業がある。かつてのバルセロナドルトムント式である。アトレティコの一点目はボールを奪われた後のプレッシングから始まっている。
f:id:real714:20141207203746p:plain
上記のオープンな状態は、いわゆる無秩序状態である。スペースが管理されていない。ボールホルダーにプレッシングがかかっていない。そのため、ボールホルダーに与えられるのは完全な自由である。無秩序な世界で重要になるのが個人の能力だ。ドリブルだったり、パスだったり、トラップだったり、シュート…ありとあらゆる能力が試されるわけだ。
カウンターはこのオープンな状況を利用するわけだ。ポジティブトランジションが良いチームは縦に早く攻撃を仕掛ける。相手のファーストディフェンダーが来る前にボールを前線に届けるわけだ。


このオープンな状態をわざと作り出すことは出来ないのか?

ということで一番ポピュラーな方法を考えてみた。それが、ドリブルの突破だ。ドリブルで相手の選手を抜けばその瞬間オープンな状態になる。これは言うまでもなく、個人による取り組みになる。集団でオープンな状態を作るにはどうすればいいのか?
相手のセットしたオフェンスとディフェンスを崩すにはそのポジジョンにいる相手選手を動かせばいい。相手選手を動かすために味方の選手を動かす。プレッシングと前線へのランニングである。
セットしたオフェンスやディフェンスをしないとどうなるのか?それはひたすらにオープンな状態になる。集団スポーツなのに個人の闘いの面が強くなる。
f:id:real714:20141207204118p:plain

話を試合に戻すとアトレティコは前線からの激しいプレッシングで試合をオープンなものにしていくことに成功している。前線からのプレッシングが上手くハマれば相手の攻撃の陣形を崩すことができる。そうなればオープンな状態になる。

オリンピアコスのビルドアップは教科書通りCB二人とGKを使う。間にボランチの選手が下りてくる。それに対して、アトレティコは3FWで対応。ここが面白い。アトレティコはサイドMFが前線に上がり、逆サイドの選手が中盤を守るようにポジショニングする。
f:id:real714:20141207204319p:plain
アトレティコの攻撃の仕組みはサイド攻撃。オリンピアコスのゾーンディフェンスに対して、右サイドからの攻略を試みる。アルダが中に絞り、ファンフランが右サイドの高い位置に上がる。そこからサイドに飛び出すことで、オープンな状態を作る。キープレイヤーはガビ。サイドバックの位置にいるお馴染みのポジショニングでオリンピアコスを困らせる。アルダトゥランは集団ではそのような戦術的な動きも出来て、個人でのドリブル突破もできるプレイヤーである。サイドがゾーンの網にかかる対策としては、ガビがファンフランの空けたスペースにいくことで解決している。攻撃のやり直し地点を確保する。オープンな状態を作った後のトランジションは、激しいものであった。オリンピアコスはなかなかカウンターを仕掛けられない。


ポゼッションサッカーが相手が動かないのを利用して崩すのに対して、相手を動かすことで崩す。相手を動かすために、味方を動かす。狙いはオープンな展開だ。オープンな展開で鍵を握るのはトランジションである。今後は、ここらの設計に詳しく突っ込んでいきたい。