プレミアリーグの研究・エヴァートンvsシティ~躍動するシルバとシティの弱点~

プレミアリーグらしいインテンシティの高いゲームになった。インテンシティとはプレー強度のことを言う。ボールを失ったら、素早くプレッシャーをかけれるか。プレッシャーがかかった状態でも速く正確にパスを繋げることができるか。ボールを繋ぐことができたらゴールまで迎えるか。キーワードはプレー速度にある。

両チームの最初の差になったのは繋ぐ能力値。お互いが相手のDFラインに激しくプレッシャーをかける。ボールを託されたエヴァートンボランチがほとんど繋げなかったのに対して、シティはボールを繋げた。フェルナンジーニョとフェルナンドがボールを繋ぐことでシティはエヴァートンのスペースをつく。
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エヴァートンはシティのプレッシャーに対して、たじたじになっていた。後方が全く繋げない+ボールを取られてのショートカウンターを喰らう。必死にボールを追いまくる、シルバとヨベディッチ。それに連動する中盤。フェルナンジーニョが高い位置からボールカットしまくる。
ボールを繋げない時に重要なのは、ボールを逃がすこと。ショートカウンターへのリスク管理である。ロングボールで逃げるエヴァートン。ルカクにロングボールのターゲットになってもらい、そこから攻撃を作ろうとする。
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ボールをキープ出来なくても、そこからのプレッシングで守備をセットし直す。
しかし、徐々に弱まってくるプレッシングにシティがボールを持ち、押し込まれてしまう。
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相手を押し込んだ場合の攻撃の起点がシルバ。MFとDFの隙間にポジションを取ることで、フリーでボールを受ける。受け手がシルバなら出し手はフェルナンドとフェルナンジーニョ。彼等が楔のパスを打ち込む。
この展開は不味いエヴァートン。ということでフェルナンドとフェルナンジーニョにプレッシャーをかける。
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登場するのはナスリとヘスス・ナバス。低い位置に下りてくることで、ボールを運ぶのを手伝う。代わりに裏に飛び出すクリシーサバレタ。ドリブルとパスでボールを運ぶので、エヴァートンのマークがズレる。
ナスリはシルバと同じような役割を果たしていた。シルバがボールを持った時は裏に飛び出す。この二人の上下のポジションチェンジにより、エヴァートンを崩すことに成功する。


面白かったのは、エヴァートンの守備に対する考え方。プレッシングがかわされるならば、セオリーとしては引き込もってゾーンで守るほうが良い。何故ならプレッシングは相手にスペースを与えるリスクのあるものだから。だが、そうしなかった。逆に得られたものもある。エヴァートンがボールを持つ攻撃機会だ。ここから見えてくるのはシティの隙である。トランジション(攻守の切り替え)はかなり速いシティだが、自陣に籠っての守備は微妙であった。セットしたDFの強さはポジショニングを守れるかどうかで決まる。シティの前線は流動的にポジションチェンジを繰り返すので、固定されたポジションを取ると攻撃のバランスが崩れてしまう。だからこそ、高い位置からのプレッシングは必需品なのだ。そのため、プレッシングが弱まると攻守のバランスが崩れる。その影響で失点が多いのかなと。守備のバランスをいじるよりは、ボールをポゼッションして攻撃のペースをいじったほうが良い気がする。でエヴァートンの狙いはそこだったんじゃないかと。つまり、シティの後方に時間を与えないこと。攻撃を繰り返させることで、自分たちの攻撃機会を増やそうと。
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ナスリ、シルバ、ヘスス・ナバスの位置を下げたくないシティ。ならばサイド攻撃でチャンスを作ろうとするエヴァートンネイスミス、マクギティーにコールマンとベインズのオーバラップで勝負する。試合は完全に切り合いに。
後半になっても流れは変わらない。徐々にシティの前線のプレッシングが弱まる。それは、疲労によるものが大きいのだろう。エヴァートンの攻撃的なプレスに合わせて攻撃のスイッチを入れ続けるシティ。攻撃機会が増えていったエヴァートンはルカクを中心に徐々にハートに襲いかかる。嫌な流れの中、先制はシティ。逆カウンターからシルバのシュートをフェルナンジーニョが押し込む。しかし、その直後にネイスミスにゴールを奪われる。先制後にも試合への入り方を変えないシティ。むしろ変えられなかったのか。もう少し試合のゲームコントロールが出来れば内容も安定しそうではある。