グアルディオラ以降のバルセロナを考える・時間とスペースのコントロール~2013/2014リーガ最終節~

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優勝争いが最終節までもつれ込んだ昨年。奇しくも直接対決である。滅多にない珍しい機会。お互いガチンコであった。最もアトレティコジエゴ・コスタ、アルダが次々に負傷する自体に陥る。
本家・本元の4ー6ー0の使い手アトレティコマドリード。弱点は一応、ある。それは相手のCBを自由にしてしまうこと。そこからの数的優位を作ったり、パスを通されると話はまた変わってくるわけで。勿論、パリ戦でもそうだったようにCBの攻撃参加はカウンターのリスクが伴う。それでもやらないよりマシである。何よりボールを奪われなければ問題はない。
クラシコの後になったこの試合、注目点はアレクシスとペドロの起用、シャビのベンチスタートである。因みにこの試合の使われ方に不満を持ったシャビが移籍志願を出すのはもう少し後の話だ。中央を固めるアトレティコに対して、サイドからボールを運ぶのは定石である。セスクが起用されたのは、メッシがサイドに降りてきたときに飛び出す役割を担わせたかったから。サイドの突破が得意なペドロ、アレクシスを使うには、シャビを落とすしかない。
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ブスケツからセスク、イニエスタの展開でアトレティコを崩そうとする。バルセロナの狙いはFWの横のスペース。右サイドは、メッシも下りてくるのでなかなかの迫力であった。しかし、粘るアトレティコ。繰り返されるコケvsダニエウアウヴェス。ギリギリで守るも、アトレティコは効果的な攻撃を仕掛けられない。立ち上がりこそ、プレッシングからの速攻でバルセロナを押し込めたが、ボールの奪いどころがない。ハーフタイムに修正を加える。
後方の三枚からのビルドアップを防ぐためにラウールガルシアを前線に上げる。
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これに連動してファンフランアドリアーノを見る。バルセロナのビルドアップに合わせてマークを噛み合わせてきた。ラウールガルシアはマスチェラーノとの空中戦でも身長のミスマッチを活かす。アトレティコは押し込まれると高い位置から守りたいがためにロングボールを使って守備の陣形を整える。逆サイドからの展開ではコケがトップ下の位置に入ってプレッシングを噛み合わせる。負傷交代が、結果的にはアトレティコに戦術の修正を与えることになったのは何の因果か。
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この相手の対応に合わせて形を変えるのが、バルセロナらしいところなのだが、そういうことはできなかった。
FWとMFの間のスペースを空けることになる。しかし、今日はシャビがいない。ということで誰も落ちてこないバルセロナ。ボールを前進させるのにかなりの時間がかかった。
アトレティコのボールを保持した際の選択肢は2つ。サイド攻撃からのカウンターか、ロングボール。ロングボールのメリットは守備をセットし直すことにある。ロングボールをそういった意図で使うのは、全くネガティブな意味ではない。4ー6ー0ゾーンから4ー3ー3のマンツーマン型プレッシングへの以降をロングボールを使うことでスムーズにこなしていた。これはバイエルンミュンヘンも使っていた。いわゆるドルトムントのゲーゲンプレスだ。この戦術で重要になっているのが、ラウールガルシアとコケ。相手の後方の枚数に合わせて上下動する。ラウールガルシアはサイドMFとFWとしての守備。コケはサイドMFとトップ下としてディフェンスする。

メッシの偽FWとしての役割と0トップの役割。それぞれを両方こなしつつ、バランスを取るのが難しいのか?と思った。この試合では連動したポジションチェンジがほとんど見られなかった。バルセロナのオフザボールの動きが見られなかったのは、各自が忠実にポジションを守ったからだ。数的優位を守るポジショニング。ゾーンの隙間でボールを受けるプレー。要は、フリーでボールを受けれる選手を作り出すこと。それによって起きるプレッシングの時間差を利用して崩すのが、バルセロナバルセロナらしい瞬間なのだ。クライフの“ボールを走らせろ。ボールは疲れない!”のバルセロナ原理である。しかし、グアルディオラバルセロナの強みは相手の守備に合わせて攻撃方法を変幻自在に変えることにあった。バルセロナの数的優位を作る動きに、持ち場を離れて何処までもついていく選手が増えた。そういった動きで生まれるのはスペースだ。そのスペースを利用する。バルセロナは連動したオフザボールの動きによって、マークを入れ換える術で対抗したわけだ。マルティーノのバルセロナは連動したオフザボールをベースに作られていた。しかし、それではスペースを管理するアトレティコに勝てなかった。そこで、従来のバルセロナらしさで勝負した。その結果、連動したオフザボールの動きが出てこなかった。グアルディオラの3ー4ー3はそのバランスを追及した結果ではないのか?時間とスペースのコントロール。グアルディオラ以降のバルセロナは如何にしてバランスを見失ったのか?