CLの挑戦・アーセナルvsドルトムント~無秩序への誘い・パスサッカーの違い~

セリエのサッカーが盤上の駒のやり合いである。プレミアのチームはそれとは全く違うものだ。その1つとしてプレースピードというものがある。攻守の切り替え(トランジション)が上のチームが勝つ。そういう意味では、プレミアらしい闘いぶりでドルトムントを葬り去ったアーセナルであった。


前回ドルトムントのプレスに破れたアーセナルだが、今回はしっかりリベンジを果たす。一方のドルトムントは、リーグ戦の不調をそのまま引きずる結果に。僕は普段ブンデスリーガを見ない。そのため、ドルトムントが何故勝てないのかわからない。ドルトムントは何故不調なのか?その理由を考えたい
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ドルトムントのプレスはアーセナルのCBを狙ったものであった。それは前回と一緒。今回はプレスに来るならば無理に繋がない。だったらロングボールで逃げる。GKを使ったロングボールでサノゴを起点にして逃がす。これが対ドルトムント仕様なのか、それともいつも通りなのかはわからない。
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とにかく厄介なドルトムントのゾーンの壁をすり抜けていく。アーセナルの狙いはもう1つあった。それはロングボールのこぼれ球によるプレッシングである。
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ただし、ドルトムントはプレッシングに対する解決策がある。GKとギュンドアンを使ったビルドアップである。アーセナルの無理なプレッシングはドルトムントにスペースを与えることになる。
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しかし、この現象こそがアーセナルの狙いであったのだ。サノゴとアレクシスとチェンバレンが前線からドルトムントの後方の時間を奪う。正確に言えば、ドルトムントの攻撃を縦に急がせる。ビルドアップが論理的に組まれたものだとしたら、ロングボールやプレッシングによるショートカウンター等は、無秩序な部類に入る。自然と攻守の切り替えの速さが問われる。

サノゴがロングボールに何度も競り勝ったのもそうだし、アレクシスやチェンバレンの個人の突破もそうだが、彼らは1人で状況を打開できる。相互関係ではない。単独の行動でだ。

僕が言いたいのは、こういうことだ。これがわざとなんじゃないかと。ドルトムントの論理的な崩しに対して、無秩序の誘いをするというものだ。そして、そういった状況で強さを発揮するマルコロイスやレヴァントフスキーはいない。前者は怪我で後者は移籍してしまった。必然的にカウンターの威力は低下してしまっている。
ドルトムントのボールを奪った後の切り替え(ポジティブトランジション)とアーセナルのボールを奪われた後の切り替え(ネガティブトランジション)のスピード対決に持ち込むことでアーセナルが戦況を有利に持っていけた。
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ボールポゼッションは試合の結果や内容と無関係である。それでも両チームの試合への取り組みかたの物差しにはなる。パスサッカーのイメージが強いアーセナルであるがポゼッション率は意外と低い。この日も45%のポゼッション率でドルトムントより下であった。ただし、これはネガティブな意味合いではない。アーセナルの選手たちは、ボールを保持した時に止まって受けない。必ず動いてボールを受ける。ポゼッションサッカーの肝はポジショニングであるが、それを無視している。スペースを作るためのランニングを重視しているからだ。


そのため、DFにも影響が出ている。教科書通りのポジショニングではない。ポジションに縛られない。これにはいい意味と悪い意味がある。いい意味は、プレッシング等の密集地帯を作りやすい。アーセナルは狭いエリアでもパスを繋ぎきるテクニックがある。これがアーセナルのパスサッカーである。悪い意味は、ポジションを守らないために相手にスペースを与えてしまうことだ。

サイドに配置されたチェンバレンとアレクシスだが、どんどん動き回る。縦に走るランニングを繰り返す。相手を崩すためのスペースメイキング。しかし、逆に言えば、試合時間をコントロールすることが出来ない。ボールをポゼッションするためのポジショニングは出来ないわけだ。



■動いてボールを貰うこと
バルセロナバイエルンがポジショニングを守ってボールを受けるのに対して、動いてボールを受けるアーセナル。サノゴの周りに走り回るアレクシスとチェンバレンを配置したことから分かるように、ポジショニングに関係なく、どんどん選手が飛び出してくる。

セリエやリーガの組み立てが論理的なのに対して、ある程度の無秩序だ。無秩序状態では個人能力が物を言う。相手のプレッシングを外したり、ドリブルで切り込んだり、ミドルシュートだったりだ。
プレミアリーグはそんなぶつかり合いなのだ。個人能力対決。

ドルトムントの組織的なゾーンの壁を崩す。トランジションからのカウンターでゴールを奪う。そのためにわざとオープンな展開に持っていく。攻守の切り替えのスピード対決に持っていくわけだ。

プレミアリーグがそういった正面衝突な対決になるために鍵を握るのが、トランジションの速さである。フォーメーションや選手配置等の小難しいことを抜きにした。純粋な力勝負。トランジションのスピード対決である。スピードが速い中で問われるのは、個人のテクニックである。速い中でも正確にボールを奪えるか、奪った後に繋げるか?相手のプレッシングをかわせるか?ドリブルで状況を打開できるか?トランジション中は攻守の切れ目である。セットされたオフェンスとセットされたディフェンスの間。無秩序状態。そんな中で状況を変えるのは、個人能力の高さである。
逆にセットされた状態ならば、戦力差を考えなくていい。与えられた役割をしっかりこなせるかどうか。