W杯の探求・イタリアvsコスタリカ

W杯は未知の世界だ。誰がコスタリカの躍進を予想できたか?前回王者スペインもあえなくグループリーグで姿を消した。こんな展開は予想できなかった。目立つのは、ジャイアントキリングである。そして南米勢の好調だ。確かに南米独特の気候で選手たちが、コンディションを上げられなかったのも1つの要因だろう。でもそれだけではないはずだ。予想通りのものほどつまらないものはない。

未知の世界を冒険するには、今までの価値観を一度捨てなければならない。普段南米のサッカーを見ていない分、リターンは大きそうだ。それは必ずしも、最新の戦術とは言えないだろう。何故なら、戦術といった観点ではヨーロッパのチームが圧倒的に進歩している。それは現在のサッカーの中心がヨーロッパであり、CLであることからも明らかだ。最新ではなくても勝負には勝つことができる。南米勢が優れているのは個人技であり、駆け引きだ。つまりはどうやって勝つか、持っているカードを最大限に活かしてくる。スペインvsチリでも見られたように、イタリアvsコスタリカでも南米独特の戦術が炸裂している。


コスタリカピルロデロッシ封じ
前回見たように、イタリアのビルドアップはデロッシピルロ、ヴェラッティ(この試合ではモッタ)の三人で行う。そして、センターバックも普通に繋げるため、5人のビルドアップ部隊がいるわけだ。これを防ぐのはなかなか至難の業である。コスタリカはその5枚に対してそのまま5枚の選手を当ててきた。
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デロッシは下りてきて3バック気味になることが多いのでキャンベルが見る。ピルロとモッタは中盤の四人がゾーンで囲むことで対処していた。キエッリーニバルザーリがボールを持つときはボラーニョスとルイスが飛び出していく。
おいおい、ちょっと待てサイドバックががら空きじゃないか?となる。そこもコスタリカはしっかりと準備している。

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サイドバックが持った場合はガンボアとディアスがプレッシャーをかける。イタリアの攻撃の仕組みとしてサイドバックがボールを持ったとき、カントレーヴァとマルキージオ、もしくはバロッテッリが飛び出すというメカニズムがあった。そういったことをされても大丈夫だ。
そのための5バックである。スライドしても4枚のディフェンスラインを維持できる。そのため、スペースが空かない。マルキージオやバロッテッリはそこを付くプレーが得意だが、そういったプレーは見れなかった。そして、最後の仕上げである。

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それでもバイタルエリアでボールを持たれるのは非常に危険だ。そこでディフェンスラインを押し上げる。バロッテッリ、マルキージオ、カントレーヴァのスペースを無くす。コスタリカのディフェンスラインは綺麗に5枚並んでいてなかなかの完成度であった。試合を通じてイタリアにオフサイドが10回もあったのはコスタリカが高いラインを保てていた証拠だろう。

それでも、イタリアが全くボールを持てないわけではない。イタリアは裏のスペースへのボール供給に全てをかける。バロッテッリがひたすら裏抜け。しかし、最後に控えるのはケイラーナバス。数少ないチャンスを潰される。そうこうしている内にコスタリカのカウンターが火をふく。パスカットからルイスがキーパーと一対一にキエリッーニがぽとんPKのプレーで防ぐ。しかし、コスタリカアーリークロスからのヘディングで先制を許すと流れは完全にコスタリカ。交代策も全く機能せず、ジャイアントキリングに成功するコスタリカであった。

「イタリアの攻撃のメカニズムは、ビルドアップから最後まで計算しつくされたものでした。どこかを防ぐにはどこかを捨てなければならない。バイタルエリア攻略から、ビルドアップまで逆算されているのです。それを利用してボール保持によって守備の機会を減少させているのではないか?というイメージが思い付きました。正に、近年のスペインと同じようにボールポゼッションによるカテナチオです。イタリアが残念だったのは、交代カードでしょう。必要だったのは裏を抜けるFWであって、カッサーノやインシーニェのようなバイタル活動タイプではありません。バロッテッリやマルキージオを自由にするためにも最終ラインと駆け引きができるタイプが欲しかった。」      


ディナターレがいれば、もう少し良かったかも。もしくはジュゼッペ・ロッシか。もっとも現代表メンバーは知らない選手が多いのでそういったタイプもいるのかもしれないが…。
南米勢の個人能力形についてはまた今度にしようと思う。なかなかW杯のチームは面白い。