日本代表の挑戦・10人になったギリシャとサイドアタック

真実を探求することは難しい。僕らの目は曇っていて、惑わされ、そして見逃していく。大事なのは安易に流されないことであり、自分の頭で考えることである。何故なら、人間は絶えず、人の影響を受ける動物なのだから。これを書いている僕もおそらく誰かの影響を受けている。それでも深く、深く考えることで真実に辿り着ける。僕はそう信じている。

コロンビアとの戦いを振り替えることで、日本のスタイルの再確認ができた。それと同時にコロンビアの強さも。日本は自らのスタイルで挑み、砕け散った。僕はその結果に、唖然としたし、切なくなった。

正直に言おう。僕は途方にくれたわけだ。日本は確実に強くなっている。強くなればなるほどその差を大きく感じてしまったのだ。コロンビア戦で見せたのは、日本のスタイルだったわけだ。それを出しきって負けた。そう解釈してもいいだろう。全力で戦った。そういった時にしか見えないものもあるはずだ。
だが、ギリシャ戦はそういった形ではなかった。引いたギリシャを崩せなかった。10人のギリシャに有効打を打てなかった。この事実は多くの人をガッカリさせた。何故日本は得点を取れなかったのか?
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前回見ていったように、ザックジャパンの最大の武器がショートパスによる速攻であった。コロンビア戦で見たように、ハイプレスがハマっているときは機能する。全体を常にコンパクトにしているため、カウンターを喰らう危険性と隣り合わせである。そのため、どこかでゲームをコントロールする必要がある。そのために、ボールをポゼッションするのである。


ギリシャは自陣で待ち構え、カウンターを狙う。ここで試されるのは日本の遅攻の精度である。

相手の守備が整っているときに、どうやって攻めるか。当然、ザッケローニはその準備をしてきた。サイドアタックである。何故、サイドから攻めるのか?それには2つの理由がある。


1つ目は、ボールを前線に運ぶためである。ゾーンディフェンスの1つの穴がサイドのスペースである。そのため、ここを利用してボールを前に運ぶことができる。そのため、中央を閉ざされたらサイドに素早く展開することが求められるわけだ。
2つ目は、ボールを奪われた際の危険性の問題からだ。中央でボールを奪われるとカウンターを喰らいやすい。サイドでボールを奪われた場合は、ゾーンの守備に移行しやすい。


ギリシャ戦から見る日本のサイド攻撃

ギリシャ戦の前半に見られる攻撃の形はザックジャパンでよく見られる形である。攻撃の起点はセンターバックになる。
注目選手は今野と左サイドで起用された岡崎だ。
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ポイントは2つ。岡崎がサイドに張っていること。山口が中央に残っていることだ。岡崎の仕事はトロシディスのマークを引き付けることにある。そうでないとそのまま長友がプレッシャーを受けることになる。山口、長谷部の仕事は中央に残って相手ボランチを中央に固定させることにある。でないとサイドにスライドされるからだ。今野は、相手のサイドMFとサイドバックの間にボールを届けることが主な仕事になる。
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岡崎がボールを持って中央に走る。もしくは山口にボールを当てることで相手のサイドバックの裏のスペースを作ることができる。
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サイドが活きれば中央が活きる。マニティアスが寄せれば中央にスペースが出来る。そこを上手く大迫や本田が利用することでチャンスを作っていく。
■10人の相手に対しての対応策は?
そんな中、ギリシャが退場者を出してしまう。ギリシャは4ー4ー1にフォーメーションを変更する。同時に日本も香川、遠藤と攻撃的カードを投入する。ここで注目すべきなのは、選手が入れ替わることで攻撃の形が変わってしまうことである。まずは香川のポジショニングに注目したい。岡崎がサイドに張っていたのに対して、中央でボールを待っている。これではトロシディスは安心して長友にアタックを仕掛けることができる。よってサイドを突破できる場面が激減する。サイドが活きなければ中央も死んでしまう。この状況に拍車をかけたのが遠藤の存在である。
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前半、日本が良かったのはビルドアップに今野を使うことで、山口がより高い位置でボールを持てるようにした点にある。一度、サイドでボールを運ぶことで相手のゾーンを越えている。ここに利点があった。しかし、後半は遠藤が低い位置でボールを貰うシーンが目立った。良くも悪くもだ。遠藤の長所はボールを配ることにある。日本のパス回しはスムーズになったが、攻撃にスピードがなくなり、相手のスライドに捕まるシーンが多くなった。


■内田と吉田の変化
ここで動き出したのが内田と吉田。吉田は自らボールをドリブルで持っていくことで内田を自由にする。吉田がドリブルするならサマラスも放っておくわけにはいかない。こうしてサイドで内田がサイドから仕掛ける時間を得る。サイドからボールを運ぶことで相手を押し込むことができるようになる。
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ギリシャの守備を切り崩すために、日本が行ったことはサイドチェンジである。スライドでサイドバックが対応されるなら、それを利用してしまえばいい。長友が今野にボールを戻す。このスペースは相手が捨てているために容易にボールを持つことができる。相手が更に寄ってくれば、サイドチェンジをすることができる。この試合で一番の決定機は香川のサイドチェンジから内田→大久保という形であった。大事なのはボールをどうやって前進させるかであり、相手をどうやって押し込むかの方法論なのだ。

日本はどうすれば、良かったのだろう。
モウリーニョならどうしただろうか?
そんな考えが頭に浮かんだ。彼はその手腕でチームを幾度となく救い、栄光に導いた。彼のレアルマドリードでの采配は、分かりやすく効率的であった。そしてとんでもなくリスキーなものであったのだ。
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しかし、こういった采配はピッチの上では見ることが出来なかった。また、ギリシャを戦略的に崩すシーンもほとんど見られなかった。もしかしたら、ザックはそのつもりだったのかもしれない。でも、残念ながら違った。最後の最後で日本はサイドを捨てて、中央に固執した。これは、何も最後のパワープレーを批判しているわけではない。吉田が上がったことで内田が引きぎみになってしまったことが逆効果だったことを考えたのだ。パワープレー自体は他に選択肢もなく致し方ない部分もある。そうではなく、中央に選手が集まり、パスワークで無理矢理こじ開けようとすることが無謀だったのだ。ギリシャはよく日本を研究してきたという。日本が困ったときに中央寄りになるのをわかっていたのだ。
後方の数的優位も全く活かせなかった。また、最後のパワープレーの選択でその流れも断ち切れた。日本の攻撃が途中に生き返ったのは吉田→内田という流れがあったからこそなのに。相手のフォワードはゲカス1人、そこの数的優位を活かさない点はないのに。日本は最後までリスクを冒せなかった。カウンターが怖い?1人のフォワード相手に?
僕はザッケローニを批判したいわけではない。もちろん、遠藤も香川でもある。ただ僕は知りたいだけなのだ。そこまでの過程を理由を。そして、真実に近づいているという実感はある。それがどんな結末だろうと。