ドルトムントvsアーセナル~アーセナルは何故ボール保持できなかったのか~

ボールを持てないアーセナル。走るドルトムント、そのようなイメージになったこの試合。何故、アーセナルはボールを持てなかったのだろうか?

ドルトムントは4ー4ー2の形で相手陣形からプレッシングを仕掛ける。狙いはコシェルニーとメルデザッカー。この二人にスピードがあるオーバメヤンとインモービレをぶつける。アーセナルセンターバック二人はスピードのあるプレッシングに手を焼く。彼らのパス精度は悪くないが、ボールを持って運ぶ力は足りない。アルテタ、ラムジーウィルシャーの中盤が助けようにも、ケールとベンダーまでプレスをかけてくるのでプレッシングをかわせない。

プレッシングをかわすパスワークに必要なのは、連動性である。アーセナルの中盤のビルドアップには連動性が全然足りなかった。そのため、ボールを受けに下りてきた選手が作ったスペースを有効活用できない。そういうことでドルトムントショートカウンターを受ける展開に。アーセナルにとってさらにたちの悪いのがドルトムントのゲーゲンプレスであった。


ここではドルトムントのゲーゲンプレスがどんなものかは長くなるので省略させて頂く。簡単に言うと、ボールを奪われたら直ぐに奪い返す。かつてのバルセロナルールである。これにより、ドルトムントのプレッシングにはまり続ける。アーセナルのディフェンスは4ー1ー4ー1のゾーン。そのため、ドルトムントの後方は前線に好き放題ボールを送り込む。


これは不味いと。このままでは良くないと感じたアーセナル。思い出したかのようにプレッシングをスタート。中心はウェルベックとアレクシス、ドルトムントはヴァイデンフェラーで逃げるものの、ボールを奪い返すことに成功する。

この展開を読んでいたのがドルトムント。前がかりになったアーセナルに強烈なカウンター。なんでもないクリアボールにインモービレ。アルテタは置いてかれ、グロスクロイツオーバメヤンの三人での数的不利に。そのまま、インモービレのシュートが決まってしまう。


僕が見たのは前半だけだが、ドルトムントの戦術が上手くハマった形になった。アーセナルの致命的だったのは、後方のビルドアップ能力。コシェルニーとメルデザッカーが味方に自由を与えることが出来なかった。ただし、GKを使ったロングボールで逃げるという手がある。しかし、空中戦が持ち味のジルーとサニャはいない。ということで意地でも地上戦にこだわらなければならない。自由な動き、パスワークが持ち味の中盤は沈黙。エジルは消えたままであった。
ドルトムントは大体が何でもできる。相手に合わせた戦いかた。それは一つ一つはレベルが極限まで高いものではないものだ。それでも相手に合わせて、柔軟に戦略を変更できるのが強みだ。レヴァントフスキーの代わりのインモービレや香川の代わりに出てきたオーバメヤンムヒタリアン等、攻撃陣も多彩である。
この辺りの戦術における柔軟性はアトレティコに似ている。アトレティコもそうだが、ドルトムントも何でもできるチームに変わりつつある。低い位置でのゾーンディフェンスと高い位置からのプレッシング。ボール保持からのゾーン崩しと連動したオフザボールからのカウンター。相手の打つ手に合わせて変化していく。勿論、それぞれの精度は本家には勝てないが、打つ手を変えることで勝っていく。トーナメントでは絶対に当たりたくない存在だ。