CLの挑戦・ローマvsシティ~プレミアとセリエの守備の違い~

サッカーの攻撃パターンは大雑把に言ってしまえば二種類である。時間を使うのか?スペースを使うのか?このどちらかになる。大切なのは、相手の守備の形に合わせて形を変えることである。どちらかが優れているわけでも劣っているわけでもないのだ。


■ゾーンディフェンスで守るローマ
ローマの守備の形は以前紹介したように、レアルマドリード型となっている。4ー3ー3と4ー4ー2の併用である。ジェルビーニョトッティを前線に残すことでカウンターの威力を維持している。ちなみに相手がシティということもあり、ジェルビーニョが下がり、4ー5のブロックを作っていた。ブロックというのは、ゾーンが効いているスペースだ。ゾーンディフェンスはスペースを守るやり方である。ボールホルダーへのプレッシングとラインディフェンスを組み合わせることで、攻撃するスペースを狭くする。ゾーンディフェンスはボールホルダーへのプレッシングが前提条件で必要最低条件だ。シティの狙いは前提条件を崩すことにあった。
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■シティのプレッシング、人への当たり
それに比べると、シティのディフェンスは人への意識が高い。同じ4ー4ー2でもえらい違いがある。持ち場を離れてでもプレッシャーをかける。僕の知識不足で申し訳ないが…おそらくマンツーマンと同じような発想でマークが決まっている。自分のいるエリアではなく、人をマークする。シティのような自由に動く選手にもついていく。相手選手に時間を与えない。スペースを管理するゾーンと比べると時間を管理するディフェンスである。
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ローマの攻撃パターン、オフザボールの動きは、シティとは全く逆のものだ。シティが時間をかけて数的優位を作るのに対して、ローマは時間をかけない。スペースに飛び出す選手とそれに連動した動きで、相手の守備を攻略する。シティのディフェンスは人へのマークが厳しい分、スペースを空けがちであった。トッティとナインゴランの連携はこうした連動したオフザボールの動きによって生まれる。基準は、人がスペースに動くこと。それに対応して、他の選手が動く。連動したオフザボールの動きは、スペースを生み出す。

ローマは動いてスペースを作る。それに対して、シティは動いてフリーの選手を作る。違いは、ボールを受ける時の選手の状態。シティはポジショニングを守る。そのエリアで止まってボールを受ける。ローマは動いてボールを受ける。1人が動き出すと全員が連動する。

トッティと言えば0トップだが、メッシの0トップとは種類が違うように思えた。トッティの0トップはあくまでもポストプレー、味方にスペースを作るための行動であること。そのために相手を背負ってのプレーが非常に多い。ベンゼマのような動きに近い。でもメッシは違う。前を向いてボールを受ける。そして、FWの位置に文字通りいないのだ。相手の守備のマッチアップを狂わせるためのポジショニングを取る。ここらへんは、バルセロナの試合を見た時にしようか。

シティの交代策はミルナーランパード。シルバが空けたスペースに飛び出す選手の登場だ。アシュリーコールがどこまでもシルバについていくための打開策。ローマは厄介なシルバを何処までもついていくことで対応。その分スペースを空けることになる。運動量が多く、スペースをつくのが上手い二人の登場で傾きかけた流れを強引に引き戻すのであった。

異なるリーグの対戦相手ということもあり、ディフェンスもオフェンスも違う両チーム。そのため、お互いに持ち味を存分に出せた試合となった。そうなると結果を分けるのは個人の能力差、完成度。そういった面でもローマはシティに引けを取らない。ただ、両チーム共、素直過ぎるのかなと感じた。そういう面ではもう少し進化が求められるだろう。次は、アトレティコユヴェントスをやろうと思う。上に言った完成度、柔軟性という意味ではこの2チームは上にある。チームのポテンシャル、強さとは何に注目すべきなのだろうか?

面白かったのはリーグごとに、ディフェンスやオフェンスの仕組みが違うという点である。CLは各リーグのトップチームがぶつかるゲームだ。そのため、出場チームはそのリーグで有効な戦術を使っているのだ。これは仮説だ。次回はその点に注目してみよう。