CLの挑戦・ユヴェントスvsアトレティコ~マッチアップと役割の固定化~

偶然にもこの2チームは何度かブログに登場している。(それは果たして偶然なのか…。)何度かレアルマドリードと対戦しているからだ。僕にとって都合がいいのは、両チーム共に馴染みがあり、勝手知ったるところだ。簡単に言ってしまえば、仕組みを知っているから書きやすいということだ。
前回は、ローマとシティの守備面に注目して攻撃方法について考えた。今回、注目すべきはディフェンスである。ブッフォンアトレティコのディフェンスを『一枚の岩のようだった。』と表現する。アトレティコのディフェンスが硬いのはわかる。誰もが知っている。でも何故硬いのかはなかなか説明できない。言語化が難しいからだ。そこで前回とは別のアプローチを取ることにしよう。つまり、ユヴェントスの攻撃面を考えることでアトレティコマドリードの守備面を考えるのだ。


ユヴェントスの攻撃パターンは、ローマと同じ手法を取る。連動したオフザボールの動きによってスペースを作る。ちなみに進化型は昨年のレアルマドリードだ。連動したオフザボールの天敵は、ゾーンディフェンスだ。このオフェンスの肝は相手がついてくる現象を利用して、スペースを作り出すわけだ。ゾーンは相手選手の位置に依存しないフォーメーションだ。いくら選手が動いてもゾーンディフェンスには関係ない。守備の位置は変わらない。アトレティコマドリードはゾーンディフェンスを極めたチームだ。相性は最悪とも言える。しかし、ユヴェントスはアレンジを加えている。ローマとは引き出しの数が違う。セリエA3連覇は伊達ではない。

ユヴェントスの3ー5ー2のわけ
その前にユヴェントスのボール保持の形を簡単に振り返っていこう。ユヴェントスピルロを中心に3バックがボールを出す役割になっている。今日はピルロがいない。それでも大部分の仕組みは変わらない。そして、その構造が攻撃でも活きている。ローマと同じ連動したオフザボールの動きである。
下準備として、後方での圧倒的数的優位を作る。これで先ずはボールを保持する。3枚のセンターバックマルキージオでボールを出していく。ウイングバック二人とセントラルを相手MFの間のスペースに配置する。ゾーンディフェンスの弱点は、MFの間のスペースである。何故なら、ボールホルダーの位置でディフェンスのポジショニングが決まってくるからだ。そのため簡単に相手の背後を取れる。
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ビダルリヒトシュタイナーがボールを受けたら、サイドの裏のスペースに抜ける。アンサルディの裏のスペースを狙う。
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ビダルにサウールがついてきた場合、テベスに直接楔を入れる。ビダルが作ったスペースを利用するわけだ。
またはFWが裏に抜けるパターンもある。FWの空けたスペースにはポグパが走る。この動きがローマと同じなのだ。レアルマドリードも連動した動きで相手を崩す。レアルマドリードの場合はFWが起点なのが違う。しかし、この試合ではアトレティコを崩すことができなかった。

アトレティコの4ー5ブロック
アトレティコの対策はレアルマドリードに用意したものと全く同じであった。捨てた部分は両サイドバックユヴェントスのチーム構造における失敗は、役割の固定である。それはレアルマドリードにも言えることであった。役割の固定化は対策を打たれやすい。そのため、アトレティコもマークを固定することで対抗してきた。
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アトレティコのプレッシングにユヴェントスはボール保持がなかなかできない。ユヴェントスのボール保持はシステムの噛み合わせのズレを利用したものだからだ、シメオネはシステムを変更することでミスマッチを防いだ。もう少し詳しく見ていこう。
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キエッリーニがボールを持った場合、ラウールガルシアがプレッシャーをかける。エヴラが持った場合は、ファンフランがプレッシャーをかける。プレッシャーをかけると同時に全体がスライドする。ユヴェントスにボールを前進させるスペースを空けさせない。
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中央を空けないスライドによってスペースがない。ポグパにはコケを、ビダルにはサウールをぶつける。チアゴは中央のスペースを埋める。アトレティコのディフェンスの固さはこのコンパクトさにある。

試合は結局1ー0。ユヴェントスは枠内シュート0という切ない結果に終わった。こうなった相手を崩すには、ロングサイドチェンジで大外を狙う他ない。シャビ・アロンソピルロのようなロングパスの名手がいればもう少し変わったかもしれない。だが、それでやっと五分五分だ。ちなみにアッレグリは途中でフォーメーションを4ー3ー3に変更。相手のマッチアップをずらそうとする。しかし、シメオネも交代策をきる。マンジュキッチに変えて、マリオスアレス。またも相手にディフェンスの形を変えられる。結局は、試合途中でマッチアップや役割の交換ができないと、交代策の切り合いのなってしまう。試合の途中で相手の守備の形に合わせて、攻撃のポジショニングを変更出来なければならない。逆にアトレティコはしっかり相手の対抗策に合わせた守備を行えていた。試合前の準備、相手のことをよく知ることが大切なのだ。