セリエの冒険・ユヴェントスvsローマ~セリエのクラシコ~

かつてのモウリーニョグアルディオラのやり合いを思い出す一戦。ドイツで言えば、バイエルンミュンヘンドルトムント。戦術的には非常に高度な試合となった。また、非常に残念なのは審判の判定により両チームのバランスが崩れ、熱くなりすぎてしまった。そんなところまでかつてのレアルマドリードバルセロナを彷彿とさせる試合になった。ここで書くのは判定についてではない。高度な戦術に関してだ。特にアッレグリが用意したローマ対策は完璧であった。

ユヴェントスのプレッシング

CLではアトレティコのプレッシングに苦しんだユーベであったが、今度はお返しとばかりにローマをプレッシングで苦しめる。
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これはローマがユヴェントスと同じ種類の攻撃パターンを使っていることと無関係ではないだろう。システムがガッチリ噛み合ってしまう。勿論、これをかわす手法もある。それが3CB式ビルドアップである。
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ケイタがDFラインに下りてくることで数的優位を作る。そこから両サイドに展開していくのが一般的なやり方である。しかし、これも読んでいたアッレグリマルキージオを前線にプレスさせる。2FW+1でローマの後方を沈黙させる。ポイントはマルキージオのポジショニングだろうか。絶妙なポジションを取り、中盤と前線の枚数の調節を行う。攻撃時にも効いていた。

リヒトシュタイナーの本当のミス
アッレグリの戦術は完璧であった。盤上の駒であったら失点はなかっただろう。しかし、人間はミスをする生き物なのだ。トッティの罠にかかり、PKを献上してしまったリヒトシュタイナー。彼のミスはそこではない。本当のミスは2失点目である。ホレバスへの一瞬のプレスが遅くなった。それは本当に僅かの時間であった。
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そんなスキをローマは逃さない。縦に抜けるジェルビーニョからスルーパス。最後はイトゥルベ。完璧な崩し。その正体はリヒトシュタイナーのミスであった。それがその前のPKの判定にナーバスになったからなのかはわからない。連動しないプレッシングは逆に相手にスペースを与えることになる。

■ローマのささやかな反撃
ローマの守備はどうだったのか?
相も変わらず、4ー4のブロックを作る。しかし、ユヴェントスの4枚のビルドアップ部隊に全くプレッシャーをかけられない。ジェルビーニョトッティが守備で全く貢献しない。そのため、ピルロが自由気ままにボールを持つ。そこからのパスワークに翻弄される。ユヴェントスの人を捕まえきれない。
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ユヴェントスの狙いはゾーンの隙間、相手の背後でボールを受けること。ゾーンはボールホルダーの位置によってポジショニングが決まってくる。そのため、隙間にポジションを取れば簡単にマークを外せる。ユーベはボールホルダーが既に自由になっているので、その位置にパスを出せる。前回述べたように相手がついてくれば、逆にスペースを作る動きで攻略する。トッティは途中で気づいた。このままでは不味いと。ピルロをケアするも、焼け石に水。両脇のCBからも攻撃を作れるユーベにはあまり意味はなかった。ローマは人がいるものの、守備は機能しないという状態に。
それでもローマは反撃する。
プレッシングによってできるスペースを利用して擬似カウンターで活路を見いだす。ただし、それは全てのプレーをダイレクトで行わなければならないわけでとても難しい。難しくてもやらなければ負けるローマ。逆に奪ってカウンターを仕掛けるユヴェントスジェルビーニョは孤軍奮闘。その圧倒的スピードでユヴェントスのDFをかき回す。両チーム共に決め手にかける中、最期に試合を決めたのはボヌッチのスーパーボレーであった。



ローマのゾーン攻略法とユヴェントスのビルドアップの仕方は似ている。ちなみに言うとミランも一緒である。ポイントはサイドバックサイドバックを高い位置に持っていって、空いたスペースにMFを落とす。ミランは逆。サイドバックが持ったら、FWが中央に、MFがサイドに抜けるようになっている。
システムの噛み合わせをずらす。フリーでボールを保持する。ゾーンディフェンスの前提条件である“ボールホルダーへのプレス”を無効化する。あとは、受けての連動したオフザボールの動きで崩す。ユヴェントスアトレティコと同じように、ビルドアップの噛み合わせを合わせた。ボールホルダーにしっかりとプレッシャーをかけることで、スペースを管理したのだった。
ユヴェントスの強さは相手に合わせて守備のやり方を変えていけることにある。ローマやミランをリスペクトした結果だろう。ユヴェントスがもう一段上に行くには、攻撃面での修正ができるかどうか。アトレティコのようなレベルのチームとやり合うには攻撃面の幅が必要になるだろう。