セリエの冒険・ラツィオvsユヴェントス~アッレグリのユーベ、変わったもの、変わらないもの~

実は何度かアッレグリユヴェントスについて書いていたのだが上手くまとまりきらなかった。ローマ戦でのプレッシングでビルドアップを封じたのは記憶に新しい。ディフェンス面での変化だけでなく、攻撃面にも注目してみよう。ということでラツィオ戦である。パルマ戦からの継続である4ー3ー1ー2(テベスの位置の解釈によっては4ー3ー2ー1)だ。コンテの代名詞である3ー5ー2をとうとう弄ってきた。その狙いはどこにあるのか?

パルマ戦~アンチ3ー5ー2~
3ー5ー2に比べて、一番の変化はビルドアップ部隊が1人少ない。その分、攻撃の枚数が一枚増えている。最近のユヴェントスへの対策として、ビルドアップ舞台を放置して、自陣に引きこもるチームが多い。むしろ、受け手をカバーする。ゾーン+DFラインの迎撃システムで徹底的に受け手を潰す。完璧にこなしたのがアトレティコ。元々ピルロをいかに自由にするか?という発想からきているので、そこがある程度、自由なら、攻撃の枚数を増やすのは当然の考えだ。
パルマのフォーメーションは3ー5ー2。セリエで3バックが流行っているのは、ユヴェントスに形を合わせているからだと勝手に推測している。フォーメーションが同じだと、何がいいか?マッチアップが分かりやすい。ユヴェントスの3ー5ー2はWBを誰が見ればいいか曖昧にしているところに利点がある。同じフォーメーションならばWBにWBをぶつければいい。マークが噛み合うので、噛み合わせるためのズレが起こりにくい。
ところが今日は様子が違う。トップ下にフェレイラがいる。ということでマッチアップの人数が足りない。計算が合わない。ユーベのビルドアップ部隊は1人減って3人。そこからボールを奪えそうではある。ただし、パルマのプレッシング部隊は二人。内1人はカッサーノ。ということで好き放題、ユーベにパスを回される。特にリヒトシュタイナーペレイラの絡みは狙っていたのだろう。右サイドからの突破で何度も何度も揺さぶる。
前線に一枚、増えたことはプレッシングでもメリットがある。パルマの3CBでのビルドアップに対して、通常の3ー5ー2では枚数が足りないのでゾーンで守るしかない。しかし、今日はペレイラテベスジョレンテの3枚がいる。パルマに全くボールを持たせない。主にペレイラユヴェントスの右サイドを守っていた。
ラツィオとの攻防~サイドの崩し~
f:id:real714:20141201102630p:plain
ラツィオユヴェントスのビルドアップ隊が1人いなくなったところをつく。懐かしのピルロ対策である。3トップでプレッシャーをかける。しかし、今日はマルキージオというもう1人のゲームメイカーが。アッレグリの狙いはここであった。マルキージオにプレッシングをかけたところを利用して崩そうとする。
f:id:real714:20141201102900p:plain
アッレグリの頭の中
f:id:real714:20141201103025p:plain

それに対して、ラツィオブラーフハイトが飛び出して来て対応する。その分、リヒトシュタイナーのサイド攻撃が活きるも迫力不足。おそらくまだまだ全員の共通理解が足りないのだろう。選手たちにも迷いがあった。
f:id:real714:20141201103132p:plain
そうこうしているうちにカウンターから点を取るユーベ。フリーのピルロからテベス→ポグバ。

相手を押し込んだ場合は3ー5ー2に近い形でパスを回していく。ピルロマルキージオキエッリーニボヌッチの四人。ペレイラとポグバがゾーンの隙間でパスを受ける。

後半に入ると修正がかかる。ペレイラがより低い位置に落ちてくるようになる。ついてくるブラーフハイト、空いたスペースをつくマルキージオ。デ・フライとサナが慌ててスライドするもフリーのテベスへ。前半は落ちてくるマルキージオに対して、飛び出して行くペレイラであったがその役割を入れかえたわけだ。
f:id:real714:20141201103226p:plain
やっている選手はユヴェントスでもフォーメーションが違う。枠組みは違う。そのため、ピッチに現れる現象も少し変化が生まれている。リヒトシュタイナーと絡むペレイラピルロを助けつつ、飛び出して行くマルキージオ。得点能力を開花させたポグバ。それぞれの良さが色濃く反映されている。コンテの時は良くも悪くも誰が出ても同じサッカーであった。自分たちの土俵に無理矢理持っていって、相手の対応によってパターンを変えるのがコンテのやり方であった。どんな相手でもプレッシングをかけてボールを奪いにいく。アッレグリは選手の個性をより重視している。そのために枠組みを変える。選手の能力を発揮させるため、選手が自由にプレーできるためだ。コンテ監督に比べ、ピッチでの対応力や柔軟性は増してきている。この試合には出ていないビダルが居場所を見つけられるか。後は、選手の戦術理解度にかかっている。

セリエの試合では選手達は盤上の駒である。監督は駒を自在に操る。駒である以上、選手の自由意思というよりは監督の指示を忠実に守れるか。与えられた役割をこなせるかが重要になってくる。選手は個である前に集団なのだ。ただ、その集団を崩すのが圧倒的個の力である点がなかなか興味深い。ユヴェントスがCLで勝てないのはこの個の力による面が大きそうである。では個の力とは何か?もう少しで核心に迫れそうである。