CLの挑戦・シャルケvsチェルシー~モウリーニョとアンチェロッティのチーム作りの違いについて~

僕がひそかに期待をしていた、見るのを楽しみにしていたチームがある。それはチェルシーだ。モウリーニョの二年目のチームが文句なしに強いからだ。本人も「私のチームは二年目が一番強い」と認めている。加えて、今年の補強が魅力的だったからだ。CL準優勝のアトレティコから躍進の立役者を強奪。ジエゴ・コスタ、クルトワ、フェリペルイス。まさかのバルセロナからセスク・ファブレガスの獲得。 モウリーニョシメオネのコラボレーションはどんなチームになったのだろうか?
見ていて、僕は非常に懐かしい感覚に襲われた。モウリーニョらしいチームだなと。よく走る攻撃陣、カウンターのスピード、サイドに張った両ウイング、自陣での鉄壁の守備。それは、僕がモウリーニョのマドリーを三年見ていたからかもしれない。レアルマドリードの攻撃の役割をそのままチェルシーに当てはめると上手く理解できる。ロナウドアザール、オスカル⇔エジル、ウイリアン⇔ディマリア。モウリーニョのチームらしく、サイドからのビルドアップが目立った。中心部分を担ったのがセスクである。
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チェルシーの攻撃の大きな特徴の1つとして、(モウリーニョのチームと言ってもいいだろう)サイドに大きく開いた両ウイングの存在がある。サイドからのボールの循環である。中央でボールを受けるのはセスクとオスカル。オスカルはポジションを下げ、セスクはポジションを上げてボールを受ける。勿論、両ウイングにプレッシャーをすぐかければボールを奪えそうだ。そのために裏に抜けるジエゴ・コスタ。裏に抜ける動きはセスクやオスカルが担うこともある。両ウイングにプレッシャーがかからなければ、そこからウイリアン、アザールのドリブルが炸裂する。

ここで大事なのは状況判断。ドリブルするのか?パスをするのか?パスは誰に出すのか?縦パスか横パスか?この一つ一つの判断スピードがもの凄く早い。シャルケよりプレーのリズムが早い。モウリーニョは、練習でこの状況判断について指導するらしい。縦に仕掛けるべきか、ボールをポゼッションするべきか。f:id:real714:20141128203618p:plain
この縦パスから縦に抜けるオフザボールの動きはマドリーのカウンターにそっくりである。これは、チームの約束事なのだろう。スペースがなければ作る。裏に走る選手の存在がシャルケのDFにエラーを引き起こす。
オスカル、セスクの仕掛けはMF同士の間にポジションをとること。サイド→中央の循環により、フリーでボールを持つことができる。攻撃の仕掛けは彼らがフリーでボールを持つことで縦パスを前線に送り込むことでスイッチを入れる。主なパターンとしてセスクが持ったら裏に走るジエゴ・コスタというパターンが見られた。レアルマドリード風に言うとエジルロナウドのホットラインだ。
サイドまでボールを運ぶ役割を担うのがマティッチ。初めて見たのはヨーロッパリーグの決勝。繋げる、守れる、運べるの三拍子揃った希有な選手。デカイモドリッチみたいなプレースタイルになっている。彼がいるおかげでセスクも自由にプレーできているようだった。

ジエゴ・コスタの役割は裏に流れたり、サイドに流れること。ウイリアンとアザールが中央にポジションを取っているときはサイドに流れていた。単独でボールを運べるジエゴ・コスタ、アザールによってどんどんシャルケ陣内に侵入していく。f:id:real714:20141128203837p:plain

前線の選手は何度も裏に走り抜ける動きをする。そのため、前線の四枚は流動的。特定のマークをつけさせないため、ポジションを変化させていく。
オスカルはこのチームで一番気が利く選手だ。アザールの分まで守備に戻ったと思うとサイドのスペースに飛び出す。ビルドアップ時には、セスク、マティッチがボールを持てなければ下りてきて数的優位を作る。
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シャルケは落ちてくるオスカルを上手く捕まえられない。時間を得たセスクからのスルーパスジエゴ・コスタというパターンは何度もあった。
カウンターでは4ー3ー3気味に変化。前線三枚のボールを運ぶ能力は異常。1人で何枚ものDFのプレスをかわしながら前線にボールを運ぶ。ボールを運んでいる間に後方からの選手の押し上げがある。

モウリーニョのチームらしいのは、システムに選手を当てはめることで自分の役割を理解させているところか。ドリブルでボールを運ぶべきか、ボールを回す時間か、そういったプレーの選択に無駄がない。チームにはおそらく細かいルールの設定がある。そのルールの設定によって選手の個人能力が高まっている。選手のプレースタイルに合わせて、システムを決めるのがアンチェロッティなら、モウリーニョは選手のプレースタイルを決める。役割を与えて、選手の個性を伸ばす。彼の元でワールドクラスになった選手が多いのはそのためだろう。そのため、どのチームでも同じように見える。だからこそ、短期間で結果を残してきた。守備の仕上がりはまだまだだが、モウリーニョのことだからしっかり仕上げてくるだろう。