CLの挑戦・アトレティコマドリードvsオリンピアコス~トランジションのスピード差~

アトレティコに完敗したオリンピアコス。その原因は何だったのか?原因はスピードの差にあった。アトレティコの方が速く正確にプレーしていた。オリンピアコスはそのスピードについていけなかった。アトレティコはボールを奪われたら直ぐ様、ボールを奪い返すプレッシングを敢行。オリンピアコスの一点目はそうした攻守の切り替えから起きた事故であった。今回はそんなプレーのスピードに注目していこうと思う。


アトレティコの攻撃の仕組みについてはとにかく走るという一言に尽きる。スペースへのランニングでボールを受ける。ボールをポゼッションしながら進むというよりはとにかく前にボールを運ぶイメージだった。

アトレティコは、オリンピアコスの守備の陣形が整うまえに攻撃を仕掛けていた。いわゆるカウンターである。カウンターの定義をするならば、守備の陣形が整う前の攻撃となる。ここで言う陣形とはゾーンの形だ。ゾーンディフェンスはボールホルダーへのプレスがかかっていることが前提条件となる。つまり、カウンターは相手のラインが整って、ボールホルダーにプレスをかける前に攻撃を仕掛けることになる。こういった状態をオープンな状態とも言うことがある。アトレティコの2点目は、そんなオープンな状態から生まれた。オリンピアコスのMFはラインは作れているがアンサルディがフリーであった。そのアンサルディからのアーリークロスからオリンピアコスのDFがクリアミス。マンジュキッチにゴールを決められる。ゾーンディフェンスの網を超える裏技としてロングボールが上げられる。ゾーンのラインの一列目、二列目、三列目を超えるパスを出すことができれば、簡単にボールを届けられる。だからこそ、ボールホルダーにプレッシングをかけなければいけないのだ。

相手にボールを取られた際に素早く、守備陣形を整えることをネガティブトランジションという。逆にボールを奪ったら直ぐに攻撃を仕掛けることをポジティブトランジションという。アトレティコのポジティブトランジションオリンピアコスのネガティブトランジションを上回ったのだ。
f:id:real714:20141207203646p:plain
オープンな状態を放置するのは極めて危険な行為だ。直ぐに守備陣形を整える必要がある。そのためのファーストディフェンダーである。そして他のメンバーは自分のポジジョンに戻る必要がある。
ネガティブトランジションの中には、そのままボールを奪いに行くという荒業がある。かつてのバルセロナドルトムント式である。アトレティコの一点目はボールを奪われた後のプレッシングから始まっている。
f:id:real714:20141207203746p:plain
上記のオープンな状態は、いわゆる無秩序状態である。スペースが管理されていない。ボールホルダーにプレッシングがかかっていない。そのため、ボールホルダーに与えられるのは完全な自由である。無秩序な世界で重要になるのが個人の能力だ。ドリブルだったり、パスだったり、トラップだったり、シュート…ありとあらゆる能力が試されるわけだ。
カウンターはこのオープンな状況を利用するわけだ。ポジティブトランジションが良いチームは縦に早く攻撃を仕掛ける。相手のファーストディフェンダーが来る前にボールを前線に届けるわけだ。


このオープンな状態をわざと作り出すことは出来ないのか?

ということで一番ポピュラーな方法を考えてみた。それが、ドリブルの突破だ。ドリブルで相手の選手を抜けばその瞬間オープンな状態になる。これは言うまでもなく、個人による取り組みになる。集団でオープンな状態を作るにはどうすればいいのか?
相手のセットしたオフェンスとディフェンスを崩すにはそのポジジョンにいる相手選手を動かせばいい。相手選手を動かすために味方の選手を動かす。プレッシングと前線へのランニングである。
セットしたオフェンスやディフェンスをしないとどうなるのか?それはひたすらにオープンな状態になる。集団スポーツなのに個人の闘いの面が強くなる。
f:id:real714:20141207204118p:plain

話を試合に戻すとアトレティコは前線からの激しいプレッシングで試合をオープンなものにしていくことに成功している。前線からのプレッシングが上手くハマれば相手の攻撃の陣形を崩すことができる。そうなればオープンな状態になる。

オリンピアコスのビルドアップは教科書通りCB二人とGKを使う。間にボランチの選手が下りてくる。それに対して、アトレティコは3FWで対応。ここが面白い。アトレティコはサイドMFが前線に上がり、逆サイドの選手が中盤を守るようにポジショニングする。
f:id:real714:20141207204319p:plain
アトレティコの攻撃の仕組みはサイド攻撃。オリンピアコスのゾーンディフェンスに対して、右サイドからの攻略を試みる。アルダが中に絞り、ファンフランが右サイドの高い位置に上がる。そこからサイドに飛び出すことで、オープンな状態を作る。キープレイヤーはガビ。サイドバックの位置にいるお馴染みのポジショニングでオリンピアコスを困らせる。アルダトゥランは集団ではそのような戦術的な動きも出来て、個人でのドリブル突破もできるプレイヤーである。サイドがゾーンの網にかかる対策としては、ガビがファンフランの空けたスペースにいくことで解決している。攻撃のやり直し地点を確保する。オープンな状態を作った後のトランジションは、激しいものであった。オリンピアコスはなかなかカウンターを仕掛けられない。


ポゼッションサッカーが相手が動かないのを利用して崩すのに対して、相手を動かすことで崩す。相手を動かすために、味方を動かす。狙いはオープンな展開だ。オープンな展開で鍵を握るのはトランジションである。今後は、ここらの設計に詳しく突っ込んでいきたい。