CLの挑戦・マンチェスターシティvsローマ~攻守の切り替えの考え方~

ローマが格段に悪かったとも思えない。かといってシティが特別な準備をしたとも言えない。結果はシティの2ー0。ホームでの借りを返した。両チームの結果に差が出たのは何故か?それを考えたい。

シティは4ー4ー2で守備をセット。プレッシングでローマのビルドアップを阻害しようとする。シティが設定したボールのい処はローマの中盤。ピャニッチとナインゴランのところはかなり激しくアプローチしていた。ローマの攻撃メカニズムとしてトッティの0トップが上げられる。シティの中盤の空いたところにトッティが下りてくるメカニズムだ。シティはここもついていった。マンガラとデミチェリストッティを吹き飛ばすシーンが目立つ。ローマにはもう一段階の攻撃手段がある。それが裏に飛び出すジェルビーニョである。シティのDFが捨てたのはこの部分であった。ローマの狙いはジェルビーニョの単独突破に絞られた。セリエでは止めることができない存在ジェルビーニョバイエルン相手にも個人技は通用していた。ところがここが勝てない。クリシーvsジェルビーニョでなかなか勝率が良くなかったのである。
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シティの攻撃の中心は、ヘススナバス。右サイドをドリブルで突破するプレーに関しては世界No.1である。シティの攻撃はヘススナバスの突破力を活かしたものであった。サイド攻撃を志向したのはローマのカウンター対策のためである。
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右サイドに極端な程、人数を集める。中心はナスリ、ジェコ。ナスリは中央の隙間にポジショニングを取ることで、ローマDFがスライドしにくい環境を作っていた。逆サイドからミルナーが流れてくる場面もあった。ローマは規則正しいゾーンなのでマークのズレが起こる。それだけではない。ヘススナバスを一対一にさせるためであった。懐かしのセビージャを思い出す戦法。相手がスライドで対応してきたらサイドチェンジ。逆サイドのミルナーは裏に飛び出していった。数的優位の構築の目的は、ボールを奪われた後のトランジションに関係がある。
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ドルトムントアトレティコがそうだったように人数を集めるとプレッシングがハマりやすい。ドルトムントは中央。アトレティコはサイドに人を集めた。中心はフェルナンドとフェルナンジーニョ。主にフェルナンジーニョがプレスしてフェルナンドがカバーする形であった。この時の距離感が絶妙。すぐにプレッシャーをかけれる位置にポジションを取るので、中心を幅広く守れる。彼等のもう1つの役割が攻撃のやり直し地点の確保である。ローマが極端なスライドで人数をかけてきた場合、サイドチェンジをする。サイド攻撃が行き詰まった時のボールを落ち着けるポイントになること。ローマはここのマークの設定も微妙であった。

シティの狙いはボールを奪ってからのショートカウンターもあったが、それ以上にローマのカウンターを防ぐことを優先していた。ネガティブトランジションで時間を稼ぐと、速やかに自陣に撤退する。ボールを無理には奪いに行かない。ローマにスペースを与えたくないようだった。そのため、ローマはシティが守備がしっかり整った状態から攻撃をスタートさせることが多かった。しかし、その攻撃に連続性がない。単発で終わってしまう。その理由は、シティのボール運びにあった。
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シティはボールをポゼッションして攻撃するチームである。日常からそのような攻撃を志向している。そのため、ローマのボールを奪うと普通に繋いでボールを運ぶことができる。それでも、ローマのプレッシングがハマることもあるだろう。そんな時はロングボールもしくはDFラインの裏へのボールで逃げる。ロングボールの競り合いはジェコ、時々ミルナーミルナーは地味に背が高いし、裏へ献身的に走っていた。ジェコの空中戦の勝利からカウンターの場面も多かった。また、サイドに流れて数的優位からボールを運びも手伝う。何でも屋のジェコのおかげで、楽にボールを運ぶシティ。
ここでわかってくるのがローマのチーム設計だ。ローマはマイボールになった時、そこまで焦って攻撃を仕掛けない。ボールをしっかり繋いで、攻撃する。それは繋いで崩せるメカニズムがあるのもそうだが、ボールをポゼッションして相手の攻撃機会を減らしているからだ。ローマ相手に無理なプレッシングを仕掛ければ、たちまちカウンターが発動する。トッティジェルビーニョの絡んだカウンターを止めるのはなかなか難しい。ローマの速攻は、相手のプレッシングで発動する。シティは引いて守ることでローマの速攻のトリガーを引かせなかった。引いて守ったときに強さを発揮したのはシティ。フィジカルで勝るシティの壁は厚く。ローマはゴールをこじ開けれなかった。
そして、いざとなったら繋げるという点がアドバンテージをもたらした。速攻だけでなく、ポゼッションしながらでも攻撃ができるのはシティの強みである。
シティの狙いは、ローマに攻守の切り替え時間でのカウンターをされたくないというものであった。その隙間の時間で活躍するトッティジェルビーニョを封じようと。ローマのボール保持は、相手の攻撃機会を減らすことが目的である。ならば、ローマのボールを保持する時間を限定すれば、こちらの攻撃機会が増える。こちらがボールを奪われた際は、素早いプレッシングでカウンター対策。そのための数的優位作成となかなか利にかなった攻撃になっていた。


それでもシティのプレッシャーを掻い潜り、速攻を仕掛けるローマ。ジェルビーニョやホレバスが決定機を決めきれない。ローマの攻撃は偶発的なものになった。
先制点は、シティのナスリによって生まれる。シティのもう1人のキーマンがナスリ。数的優位のためにサイドに下りてきたり、相手のゾーンの隙間でボールを受ける。先制点はナスリのミドルシュートか、決まった。

シティの交代策は、ヘススナバス→シルバ。先制点が決まる前からシルバが準備していたことを考えると、ボールをより保持しようとする采配になるだろう。攻撃機会を増やそうという采配。サイドでの数的優位でのカウンター対策から、中央での数的優位で攻撃を加速させようとする。リードしていてもボールを保持することで、相手の攻撃機会を減らすことができる。ナスリをサイドに出して、シルバをトップ下に。サイドに流れても仕事ができるシルバとナスリなので、前半の流れを継続させる。

シティの目論見が全て成功したわけではなかった。ローマにも得点のチャンスは、十分にあったわけで。しかし、ことごとく枠にいかない。バーやポストに阻まれる。論理的に取り組んだシティより、ローマのほうがチャンスを掴んだ。ローマよりチャンスが少なかったシティが勝った。そんな試合であった。