バルセロナvsパリ~数的同数を揃えること、サイド攻撃の誘導~

見事にバルセロナを撃破したパリ。それはパリの準備が良かったからだ。準備したのは、自分のマークを明確にすること。数的同数を揃えることでバルセロナにボールを進ませなかった。

パリのフォーメーションはカバーニを左サイド、パストーレを中央、ルーカスを右にした変則的4ー3ー3であった。パリも守備時にはルーカスが戻ることで4ー4ー2に変形する。これは、1つの定番になりつつある。昨年のレアルマドリードの形を意識したものだ。ローランブランはここに少しのアレンジを加えている。
バルセロナのサイド攻撃は、昨年のレアルマドリードのものとよく似ていた。要は数的優位から連動したオフザボールでスペースを作るものだ。仕掛けの肝は、サイドのMFが誰を見ればいいかわからなくなる点にある。本来のマテュイーディが見ればいい相手はダニエウアウヴェスだ。しかし、中央からサイドに移動したラキティッチの存在により、そこが曖昧になるわけだ。f:id:real714:20141015081509p:plain
パリの対策も他のチームと同じ。マークを固定化する。アレンジポイントは左サイドに設置されたカバーニだろうか。サイドに張ることで、ラキティッチが使いたいスペースを埋めてしまう。カウンターが怖い、ラキティッチはサイドに移動しない。マテュイーディが本来のマークであるアウヴェスを見れることによって、ゾーンを維持する。
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マークを固定することでゾーンを維持できる。モッタは中央のスペースを守ることを優先していた。ラキティッチはボールを持てるものの、アウヴェスにボールを渡してもマークがついているので攻撃は可能性の低いものになった。もっともそれでも、点が取れてしまうのだが。マスチェラーノカバーニをぶつけることで自ずと攻撃は左サイドからのものが多くなってくる。
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マテューの攻撃参加によって中央の数的優位を作る。マテューがフリーでボールを運ぶため、プレッシングがズレる。そこからボールを進める。ルーカスがプレッシングにくれば、ジョルディアルバにボールがわたる。そこでネイマールとジョルディアルバvsファン・デル・ヴィールとの2対1になる。中央はヴェラッティがプレスにいけば、イニエスタにパスが通る。中央でイニエスタ、メッシ、ネイマールが数的優位を作るので、バルセロナはチャンスを作れる。実際にゴールを奪う。
しかし、それはパリの罠であった。
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マテューが空けたスペースにルーカスモラウがカウンターで走り込む。スピードのある彼が右サイドに配置されたのはこのためだ。右サイドへの攻撃の誘導。カバーリングにはブスケツが。勿論、ブランはここまで読んでいた。ブスケツパストーレをぶつけた理由、カバーリングブスケツが行こうがパストーレがサイドに走り込むことでルーカスの突破を防がせない。逆サイドから切れ込むカバーニ。ついていくマスチェラーノ。更に裏に飛び出すマテュイーディ。パリの三点目は、論理的に組み立てられたものであった。


これらは昨シーズンのレアルマドリードの対策にとても良く似ている。マドリーではパストーレの役割をベンゼマが担っていた。ブランにとって計算外だったのは、カバーニがチャンスを物にできなかったところであろうか。もっともセットアッププレーでチャンスを物にできたのもそうだし、バルセロナの個人技から決められるのも計算外だったことを考慮すれば妥当なのかもしれない。
ラキティッチという新たなピースによってサイド攻撃が復活したバルサネイマールイニエスタ、ジョルディアルバの左サイドが非常に印象に残った。特にネイマールは、生き生きとしていて本調子までもう少しだろう。左サイドの1番手は彼等でいいだろう。問題は右サイド。バルセロナはどうすれば良かったのか。全盛期のバルセロナはどうだったのか。グアルディオラに聞いてみよう。
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ポイントはシャビが落ちてくることで、ブスケツのマークを剥がしていること。シャビがいたスペースにはメッシが落ちてくる。ペドロはメッシへのマークを防ぐために裏を狙う。アウヴェスはサイドバックを釘付けにしている。トッティの0トップとメッシの0トップが違うのはこの点にある。メッシは文字通り、FWでないのだ。ポジションを下げることで相手のマッチアップを変更する。ペドロが裏に抜けるのは、あくまでも副産物に過ぎない。この試合でも数的優位を作り、CBのマッチアップがいなくなる現象を起こしていた。最近のバルセロナはどういうわけかこうした動きが出来ない。中央を分厚く守るアトレティコを全く崩せなかったのは記憶に新しい。そこで今季は、サイド攻撃の復活に着手しているわけだ。まだ、ラキティッチとメッシの間に特別な関係が気づけていないように思える。それでもサイド攻撃が復活したバルセロナの復活は近い。そんなことを思った試合であった。