ザックジャパンと攻守のバランスについての考察~3ー4ー3とは何だったのか?~

いよいよ運命の戦いが始まる。4年間の集大成だ。日本は世界にどれくらい通用するのか?その答え合わせである。

普段日本代表の選手達を追いかけていない僕でも気持ちが高ぶるのはやはり、僕が日本人だからだろう。DNAがそうさせるのだ。

急に日本代表について考えるのには無理がある。そこで色々なインタビュー等を見て、ザックジャパンの可能性について考えようという企画だ。結局皆さんが知りたいのはこういうことだろう?ザックジャパンは強いのか弱いのか?



ザッケローニが求めるバランスとは何なのか?

■ザックとゾーンディフェンス
僕がわかったのはザッケローニは4ー4ー2の信望者であったことだ。キャリアの序盤は4ー4ー2のゾーンディフェンスによって躍進を遂げている。また、関係者の証言からもその緻密さ、戦略性は伝わってくる。そして、ウディネーゼでも同じフォーメーションを使っていたが、ある時3ー4ー3というオプションを試した。それは、偶然と必然が上手く重なったものであったのだ。その時、ウディネーゼは一点を追いかける展開で布陣を攻撃的にする必要があったのだ。また、ザッケローニも4ー4ー2の攻撃面での限界を感じていて、チームの改良の必要性から3ー4ー3に変える発想があった。その試みは見事に成功例したわけだ。最も本格的に導入するのは次のシーズンを待たなければならなかったのだが。この話を聞いて、僕が思い描いた人物はアンチェロッティだ。アンチェロッティはかつて、ロベルトバッチョという稀代のファンタジスタを使いこなせなかった。何故なら4ー4ー2に彼の居場所はなかったからだ。そして、ジダンピルロとの出会いから選手にあった戦略、システムを使うようになる。
ザックがアンチェロッティと違ったのは、彼の元には特別な選手はいなかった点である。彼が求めたのは、守備時の固さを失うことなく、攻撃力を上げることであった。攻撃時に選手の位置が動けば、当然ながら守備時の配置が崩れてしまう。そこでフォーメーションを変える必要性に迫られたのだった。

では実際に日本の攻撃パターンを見ていくとしよう。
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「日本の攻撃のスタート地点はFWの横のスペースです。アーセナルやローマと同じようにここでボールを受けることでゾーンを攻略します。ただし、普通にボールを受けるだけではダメです。相手のFWはボランチへのパスコースを切ることが仕事だからです。そこでサイドにボールを受けさせることで、そこからの1-2でここのスペースを攻略するのです。」

もう少し分かりやすく説明しよう。図は日本代表によくみられる形の一つだ。本田がボールを受けるために、MFの間のスペースに顔を出す。岡崎はサイドに張って横幅を確保する。ここで、岡崎サイドを切られた場合、吉田にボールを預ける。吉田はそのまま、本田へ縦パスを出す。もしゾーンをそのまま維持されたら、そのまま岡崎に岡崎は中央の本田へボールを返す。
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■日本の攻守の切り替え
「日本代表の攻守の切り替えは3ー4ー3のボジショニングと発想は同じです。攻守の切り替えでボールを奪うにはボールホルダーへのプレスとゾーンで囲む発想が大切です。つまりは、網を張るわけですね。日本代表は次の図のようなフォーメーションで攻撃します。」
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「分かりやすいように3ー4ー3の形に無理矢理直してみました。ここからボールを奪われた後の攻守の切り替えが次のような形です。」
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「ボールホルダーに近いサイドの選手はどんどん前にプレッシャーをかける。逆サイドの選手は、斜め後ろに戻っていく。中盤はサイドにスライドしていく。こうして狭い局面で4ー4ー2のゾーンを作ることができます。ただ図を見れば分かるようにかなり複雑な動きが求められます。そこでザッケローニはこの動きを覚えて貰うために、3ー4ー3を導入したんではないかと思うのです。その結果、日本代表は、トランジション(攻守の切り替え)という面では大幅に改善されました。」

サイド攻撃をより進化させつつ、ゾーンの守備を実行するためのフォーメーションこそが3ー4ー3だったのだ。日本はセットオフェンス時は3ー4ー3に近い形になる。それは攻守の切り替えから、プレッシングをかけるためなのだ。



■日本がミドルシュートから失点を繰り返すわけ
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「では逆にどういう点に弱いか?それは引いて守るシーンです。日本は基本的には、本田、大迫の二人を残した4ー4ー2のゾーンで守備を組みます。ここで問題になるのはバイタルエリアについての感覚です。日本代表はここを守る意識が低い。遠藤、長谷部が簡単に釣り出されて、そこにパスを通されるシーンが多いのです。それは彼らが元来守備に特化した選手でないこともあります。しかし、それだけではないのです。原因はサイドの選手にあります。香川が守備のセットボジションにいないことが多いです。結果遠藤が釣り出されてバイタルエリアを開けてしまうのです。長谷部がスライドして対応することもありますが、岡崎がスライドで中よりになるのは見たことがありません。スライドで中央を守るという概念が希薄なのです。ザッケローニが3ー4ー3を導入しようとしたもうひとつの理由がこの守備面にあるのではないのでしょうか?先程も見たようにサイドの守備の面は大幅に改善しそうです。」
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日本は攻撃面に関してはかなり改善されてきた。自分たちのサッカーが出来れば、W杯でもいい結果が残せるだろう。ただし、それができないときもある。そういったときにどうするか?あとはそれが問われている気がする。何故ならサッカーには必ず対戦相手がいるのだから。
まあ、何はともあれ僕は結構期待している。日本代表が世界とどこまで戦えるか。明日のコートジボワール戦は楽しみだ。